第三十二回 真心をお伝えしたくて


・湘雲が麒麟を拾ってくれたことに感謝する宝玉。襲人を交えて楽しく談笑。
そんな中、賈雨村がやってきたとの知らせが。会いに行くよう勧める湘雲と襲人だったが、宝玉はいやいや顔。
湘雲「今後のためにも、お役人様とお付き合いしておいた方がいいでしょうに」
襲人「いつだったか、宝釵様もそんな風におっしゃったんですけど、若様ったらまるで聞く耳持ちませんのよ。まあ、幸い宝釵様ですからその場は大人しく引き下がりましたけれど、これが林のお姫様ならどうなっていたことやら…」
宝玉「フン、もし黛ちゃんなら、そんなふうに僕を不愉快にさせることなんか言わないよ」
と、実はこのやり取りを、ほかならぬ林黛玉が外で聞いていた。
宝玉の言葉を聞いて、一人感動してしまう彼女。
「ああ、私の目に狂いはなかったわ。あなたはやっぱり私の知己だったのよ。でも周囲の顔色も気にかけず私のことを褒めるなんて、なんだか恥ずかしい。それに、分かり合っている私達の前へ、どうして首飾りだとか麒麟だとかを持った人が現れたりするのかしら。おまけに、私達が知己だとしても、私の身の上の不幸や病気はどうにもならないし…」
いつの間にかブルーになって泣き出す黛玉。そこへ宝玉が出てきて、あわやいつもの喧嘩になりそうだったが、宝玉の言葉に思いやりを感じ取った黛玉は、自分から矛をおさめる。
「あなたの言いたいことなら、私わかってますわ」
取り残された宝玉は、ぼんやり呟く。「黛ちゃん、これまで打ち明けられなかった気持ちを、今日は思い切って言いました。だから僕は心残りもありません。僕はあなたを想うあまり病気になってるんです。こんなこと、人前ではとても言えません。寝ても覚めても、あなたのことを考えてるんです…」
宝玉に忘れ物を届けるべく追ってきた襲人は、彼のツイートを聞いてびっくり仰天。
「若様、まさか黛玉様を…」
立ち去る宝玉を茫然と見送る襲人だった。

・戸惑う襲人のもとへ、宝釵がやってくる。湘雲に宝玉の靴をこしらえてくれと頼んだことに話題が及ぶと、宝釵は顔色をくもらせた。
宝釵「この前聞いたのだけど、湘雲ちゃんは実家だととても窮屈にしているみたいなの。お針子を雇わないで、仕事は全部自分達でやっているんですって。私が詳しく尋ねようとしたら目を赤くして、口をモゴモゴさせてたわ。あの様子、見てるこっちが悲しいくらい」
襲人「そういえば、前に何か頼んだ時も、随分時間がかかってましたわ」
そんな話をしていた矢先、突然老女が慌てて駆けてきた。
「大変です! 金釧児さんが井戸に飛び込んで死にました!」
ショックを受ける襲人。宝釵は王夫人のもとへ向かった。

・案の定、落ち込んでいる王夫人。「まさかあの子がこんなことをするとは思わなかったのよ。本当は二、三日したら呼び戻すつもりだったの。あんなに気性の激しい子だとはねえ。これは私の罪だわ」
そんな奥方を慰める宝釵。
「おばさまはお優しい方です。でも、わたくしが思いますに、金釧児は腹立ちまぎれに飛び込んだのではなく、きっと井戸の近くで遊んで、誤って足を滑らせたんですわ。余計に銀を多く出してお弔いをすれば済むことです」←あんた、もうちょっとマシな言い方出来んのか?
他にもあれこれと金釧児のお弔いに協力を申し出る宝釵だった。

待て次回


小言
宝玉と黛玉が心を通わせるシーンがなんとも嘆美な回。紅楼夢でも屈指の感動的な場面だと思われ。
そして金釧児の死。近頃キャピルンな展開ばかりが続いていただけに、この事件のショックは重い。また登場人物達の内情がかなり深く掘り下げられているのにも注目。宝玉黛玉はもちろん、主や同僚を思いやる襲人、皆の前では明るいのに実家は貧しかった史湘雲、いい人そうに見えて体面ばっかり気にしている王夫人、いい子すぎてむしろ冷徹にすら見える薛宝釵などなど。

気になる人物たち
賈宝玉…黛玉への思いを吐露する場面は感動的。
林黛玉…珍しくデレた。本当に珍しい。しかし、宝玉の部屋へやってきたそもそもの理由は、西廂記みたいな小説に登場する縁結びグッズを持っている湘雲と宝玉の様子が気になったから。いつも通りの黛ちゃんでした。
薛宝釵…王夫人へのフォローは、死んだ金釧児の立場にしてみたらあんまりな言い方。宝釵の性格のマイナス面が浮き出たシーン。襲人とは第十九回で彼女の見識を認めているだけあって、仲が良い。
王夫人…金釧児が死んで落ち込む。実の娘と思っていたのよ、とか今更そんなこと言ってもねえ。なお、今回の事件を忘れたかのように、後の回でも同じような悲劇を引き起こす。
金釧児…合掌。実はそれまでの賈家だと、侍女が井戸に飛び込んで自害するようなことは無かった(by賈政)。王夫人が取り乱しているのは、この事件で自分の体面が危うくなるから、といったこともあるのでは? 
花襲人…宝釵を持ち上げる一方、何気に要所要所で黛玉をディスっている。
史湘雲…賈家では明るく振る舞っているが、実家では貧乏窮屈な暮らしをしていることが判明。可哀想な子やで。
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