2015_02
28
(Sat)21:40

今古奇観 その十五


 ご紹介する今回のお話は「金玉奴が棒で薄情者を打つ」。
古今小説の第二十七巻にあたる。原題は「金玉奴棒打薄情郎」。


ものがたり
宋代はあちこちで乞食があふれていた。杭州の地では金老大親方と呼ばれる乞食の親分がおり、生活に困る乞食へ飯を食わせるやら金を貸すやらで大いに稼ぎ、街でも十指に入るほどの金持ちだった。お金がすっかりたまると乞食を引退し、悠々自適に過ごしていた金老大だったが、先立たれた妻との間に生まれた一人娘、玉奴の嫁ぎ先が悩みの種だった。金玉奴は顔もよければ針仕事に音曲、果ては学問にも通じている素晴らしい娘。しかし乞食の娘という身分のせいで、貰い手が見つからなかった。
 そんなある日、金老大は、貧乏だが優秀な書生がいるという話を聞きつける。名を莫稽といって、両親に先立たれて金に困っており、どこかへ婿入りしたいと考えているところだった。
 金老大が縁談を持ち込むと、莫稽も渡りに船と承知する。話が決まると、盛大な婚礼が開かれた。ところが、金老大の乞食仲間だった金瘋子は自分が招待されなかったのを恨み、仲間の乞食と共に宴席へ乱入、婚礼をぶちこわしにしてしまう。
 こんな悔しい目に遭うのも自分の家柄が悪いからだと、金玉奴は莫稽をせき立てて学問をさせる。努力が実り、見事試験に受かって進士となった莫稽。しかし、近所の子供達が「乞食の婿がお役人になった」とバカにするのを聞いたことをきっかけに、妻を疎むようになった。莫稽は上司の名で赴任することになり、妻と共に船で旅にでる。ある夜、金玉奴を船室の外へ連れ出した莫稽は、彼女を川へ突き落としてしまう。幸いにして助かった金玉奴は、軍の輸送管理を務める許厚徳夫妻に拾われる。ひとまず玉奴を養女ということにして、任地へ向かう許厚徳。
 やがて淮西に到着。折しも、莫稽は許厚徳の部下だった。挨拶にきた莫稽に対し、許厚徳は密かに案を練る。この薄情者と玉奴を一緒にして、夫婦をやり直させるつもりだった。数ヶ月奴、許厚徳の部下に対しわざと再婚の話を進める許厚徳。莫稽に否やはない。玉奴は寡婦として生きるつもりだったが、劉夫人の説得で考えを改めた。
 そして婚礼当日、意気揚々と式場に入ってきた莫稽を、許家の女中達が一斉に棒で打ちかかる。慌てふためく莫稽の前には、かつて殺したはずの妻の姿が。許しを請う莫稽へ、玉奴は唾を吐きつけて散々に罵った。頃合いを見て仲裁に入った許厚徳は、二人を再び夫婦にする。以来、莫稽と金玉奴は仲睦まじく過ごし、また金玉奴は許厚徳夫妻へ孝行を尽くしたのだった。


冒頭の入話は、あの有名な朱買臣のお話。受験や漢文などで、皆さん一度くらい触れたことがあるのでは。朱買臣と妻の関係は、本編の莫稽と玉奴の逆になっているのが面白い。
今回は乞食の娘が書生に嫁ぎ、波瀾万丈な生涯を送る話。中国社会では古来より、乞食になることは一種の勝ち組とされている。乞食は賤民から除外されており、働く必要が無かったので、本編の金老大のようにうまく立ち回れば金持ちになることが出来た。
とはいえ、乞食が世の嫌われ者であったのもまた事実で、本編の玉奴に対する扱いを見ればそれは明白。玉奴の場合は女性なので、その苦労は男性以上だったはず。
ちなみに本編で九老大が営んでいたような乞食ビジネスは、現代の中国でもしぶとく生き残っている。中国の歴史を知るうえで乞食の存在は外せない。
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C.O.M.M.E.N.T

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