第五十六回 賈探春は伊達じゃない!


・前回に引き続き、大観園経営改革に尽力する探春達。
探春「私達の日用品は、買い出し方がいい加減なものを買ってくるせいで、結局女房さんが買い直ししているわけでしょ。それじゃ二度払いでお金が無駄じゃない。やめるべきだわ」
平児「ええ、それも奥様が前々からやろうとしていたことなんでございます。お嬢様が言い出してくれて何よりですわ」
探春「それから大観園には余った土地がたくさんあるでしょ、女房さん達にいくらか割り当てて作物なんかを作れば、土地が無駄にならないし収益も出るわ」
平児「ええ、それも前々から奥様がやろうとしていたことなんでございます。お嬢様が言い出してくれて何よりですわ」
 そこで進み出た宝釵、笑いながら平児の頬をつねる。
「まったくこの人ってば、逆らうわけでもなくへつらうわけでもなく、口がうまいったらありゃしない」

・そんなわけで、女房達に土地を与えて耕させることに。頑張って働けば自分の金に還元されるだろうと、女房達も大賛成。改革は実行にうつされていった。

・そんな折り、賈家と先祖代々のつき合いをしている江南の甄家が上京してきたとの知らせ。甄家にも勉強嫌いの若様がおり、なんと名前は宝玉だという。わーお、そんな偶然ありですか?

・そんな甄宝玉の存在を頭から信じない賈宝玉。部屋の寝床でまどろむうちに、大観園そっくりな花園の中に迷い込む。侍女の身なりをした女の子達を見かけ、ここがどこなのか尋ねる宝玉。ところが侍女達は冷たい。
何このガキ、臭いんだけど。近寄んないで
「みんな行きましょ。こんな人に構ってたら、うちの宝玉若様に怒られちゃう」
酷い言葉をかけられて宝玉もガックシ。一方で、本当に自分と同じ宝玉がいたのかと興味津々。足に任せて庭園を歩き回ると、何と自分そっくりの貴公子を見つける。
 その貴公子は侍女と話し込んでいるところだった。
「母上に聞いたのだが、都にも私とそっくりの宝玉さんという方がいるらしい。実は夢を見てね、そこである花園に迷い込み、何人かの侍女さんに会ったのだが、みんな私をゴミのような人間扱いして構ってくれない。ようやく部屋にたどりつくと、その宝玉君がいたのだが、生憎眠っていたところでね…」
 自分のことを話しているのだと知って、宝玉は慌てて声をかける。
「私がその宝玉ですよ」
「おや、あなたがですか? これは夢じゃないか?」
「夢なんかじゃありませんよ」
 出会いに喜ぶ二人の宝玉。そんなところへ呼びかけの声。
「お殿様がお呼びですよ!」
 ぎくりとする二人の宝玉。どうやら怖いオヤジがいることまで同じらしい。

・寝床にやってきた襲人は、宝玉が「宝玉君、宝玉君」と寝言を口にしているのを見て吹き出してしまう。
「ねえ若様、どこに宝玉様がいらっしゃるんですの?」
 揺り起こしながらそう尋ねると、寝ぼけ半分の宝玉が戸口を示して答える。
「今出てったとこだよ」
「若様、よく見てごらんなさいな。若様が指差しているのは、鏡にうつっているご自身ですわ」
言われてみると、鏡がある。麝月が鏡を見ていると夢にうなされるもとだから、どかしてしまいましょうと提案した矢先、王夫人からの呼び出しがきたのだった。

待て次回

小言
賈探春大改革の後編。上では省いてしまったが、探春の計画する節約計画は読んでいて非常に唸らされること間違いなし。とはいえ、彼女も家から一歩も出たことがない箱入りお嬢様なだけに、金銭面に関しての知識は乏しいところが目立つ。そんな部分を、商家の娘である薛宝釵がうまくフォローしているのが見どころ。そこにやり手の侍女である平児が加わったことで、より改革がスムーズに進んでいる。
さて、探春達の活躍はもとより、興味深いのが後半の甄家の物語。正直、初読では意味不明だろう。
紅楼夢の登場人物の名前は、その多くが何かしらの意味合いを持たされている。例えば賈家四姉妹は「元、迎、探、惜」だが、これは言いかえると「原、応、嘆、息(嘆息せざるをえない)」という意味になる。いちいち挙げていたらキリが無いので省略するが、今回出てきた甄宝玉は賈宝玉は表裏の存在なのだ。甄(zhen)は真であり、賈(jia)は仮。つまり本物と偽物。主役の賈宝玉は偽物とはこれいかに、といったところだが、真実は後半になるとわかるようになる。というわけでお楽しみに。

気になる人物達
賈探春…大観園の改革に励む。しかし、彼女の努力にもかかわらず、賈家の崩壊は止められない。やることが全て遅かったのかもしれない。
薛宝釵…探春のブレーンとして活躍。大商人の娘なので、探春や黛玉のようなお嬢様と違い、お金に関する知識がしっかりしている。賈家がひっ迫していくにつれ、彼女は商人育ちの一面をますます見せていくことになる。
平児…前回に引き続き、いい仕事をしている。平児ファンにはたまらない回だろう。
賈宝玉…夢の中で甄宝玉に出会う。果たしてこの出会いは本物なのか、それとも…。
甄宝玉…江南甄家の若様。何から何まで宝玉そっくりだが、この先は…。
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