2015_04
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(Wed)22:57

紅楼夢 第五十九回

第五十九回 果てしなき戦い! 侍女vs女房!


・史太君の一同は霊棺送りで大忙し。栄国邸では主筋の人間が少なくなったので、使用人の数を増やして屋敷の人々の出入りを制限。

・ある朝、化粧で頬がかぶれたとぼやく湘雲。宝釵はかゆみ消しに薔薇硝(なんかようわからんが、現代でいうところの美容クリームみたいなもん)を探したが、生憎手持ちがないので、侍女の鶯児へ命じて黛玉のところから貰ってくるように言う。新しく宝釵の侍女になっていた蕊官も同行することに。

・鶯児と蕊官はおしゃべりしながら黛玉のもとへ。途中、柳の小枝で花籠を編もうと言い出す鶯児(おい、おつかいは?)

・ようやく黛玉のもとへやってきた鶯児達。編んだばかりの花籠を黛玉にプレゼント。その後、黛玉の侍女になっている藕官も連れて、三人で枝編み。

・そこへふらりと現れた宝玉の侍女見習い、春燕。藕官に話しかける。
春燕「うちの叔母さん、あんたが紙銭焼いたのを怒ってたよ。あんた、ここに居着いて数年で随分恨みを買ってるのね」
藕官「あの人達のは逆恨みよ。あたしが稼いでるおかげで暮らせてるはずなのに。自分達が強欲なくせして、あたしがちょっとお金を使ったら怒るんだもの」
春燕「前に宝玉様の言っていた通りかもしれないね。女は男に嫁ぐと、どんどん駄目になるって。うちの母や叔母も、歳をとるごとに欲深になっていくんだから。この前もね、うちの母ったら芳官ちゃんが髪を洗って欲しいといってるのに、全然構ってあげないの。そういえば、このあたりの庭って叔母さんの受け持ちでしょ。勝手に枝を折ったりして怒られないの?」
鶯児「平気よ。どこのお庭も、こういう髪飾りを作るためのお花をお嬢様達のために折っているから。うちの宝釵様にいたっては、普段花飾りなんか作らないもの。私が少し持って行っても、誰も文句なんか言わないわ」

・ところが、そんな話をしていた矢先に春燕の叔母がやってくる。柳の枝が折られているのを見るや怒り心頭。とはいえお嬢様つきの鶯児を叱ることは出来ないので、春燕へ矛先を向ける。
「ファック! 見張りに行けと言ったろうがこのクソガキ!」
「まあ、叔母さん。どうして私を叱るんですか」
 戸惑う春燕の横で、鶯児が笑って冗談を言う。
「おばあさん。この編み物、春燕ちゃんがどーしてもって頼むものだから、あたし仕方なく編んでるのよ。この人ってば追っ払ってもまるで動かないんだから」
 ところが、その冗談を真に受ける叔母。
「サノバビーッチ! お前母親の言うことも聞かず、この叔母の言うことにも逆らおうってのかい!」
 怒鳴りながら、持っていた杖でビシバシ春燕を叩く。これには鶯児も大慌て。
「今のは冗談なんですって。この子を打ったりしないでよ」
「姉さんは黙ってください! わたしゃ、自分の子供をしつけているだけです!」
「しつけるんだったら、いつでも出来るでしょ。人の冗談を取り違えてまで、娘にしつけをしたいっていうの!」
 タイミング悪く、春燕の母親までがそこにやってくる。叔母と鶯児から話を聞いた母親、娘を慰めるかと思いきや、日頃の鬱憤を晴らしてやるとばかり、春燕をひっぱたいて叱りつける。
「この馬鹿娘! ちょっとお部屋勤めになったくらいで、お高くとまったつもりなの! お前は私が腹を痛めて産んだ子なんだ、お前のような奴はしつけて当たり前なんだよ!」
 泣いて逃げ出す春燕、それを追う母親。春燕は襲人の姿をみつけ、彼女にすがりつく。日頃おとなしい襲人もこれには激怒。
「この前は義理の娘、今度は実の娘。一体一日に何度娘を殴れば気が済むの!」
「ふん、これもあなた方が娘を甘やかすせいですよ!」
 ヒートアップしてきたところで、麝月が一言。
「なるほどそうですか、あなたは私達が娘さんをちゃんと教育出来ていないとおっしゃる。それもいいでしょう。ではしつけの出来る方を呼んで裁きをつけて貰います」
 そして平児を呼んでくるよう、侍女見習いに告げる。周りの女房達は慌てて、春燕の叔母に謝るようすすめる。が、平児(というより後ろに控えている王煕鳳)の恐ろしさに気付かぬ春燕の叔母は聞き入れない。
「どこの国に自分の娘をしつけちゃいけない決まりがあるってのさ」
 そこへ、侍女見習いが戻ってきた。
「平児姉さんは今手が放せないそうです。で、お姉さんからの伝言ですが、そういう騒がしい輩は今すぐ追い出して鞭で打ち据えてやりなさいとのことでした」
 屋敷から追い出されると聞くなり、顔色が変わる春燕の叔母。先ほどとうってかわって、襲人に泣きすがる。
「どうかお慈悲を! わたしゃ後家でして、屋敷から追い出されたら乞食暮らしをする羽目になってしまいます! 娘や、母さんがピンチなんだから、お前も何か言っておくれ!」
 下手に出られてしまい、強く言えない襲人。結局宝玉の命令で許すことに。

・その後、平児が遅れてやってきて、ことの子細を襲人に尋ねる。
平児「なあんだ、そんなことだったの。そういう話は屋敷のあちこちで起こってるわ。とるに足らないことよ」

次回を待て

小言
前回に引き続き、侍女達の主役パート。侍女と女房達の日常と、次々に引き起こされる事件が見物。侍女と老女の対比は、宝玉(=作者)の女性像をわかりやすく読者に伝えている。才色兼備のお嬢様達や、天真爛漫な侍女達の姿は、作者が女性に抱いているプラスなイメージであり、がめつくて我が儘な奥方・妾・女房や老女は女性のマイナスイメージが集約されている。これはそのまま宝玉の女性の好みにも反映されている。宝玉が苦手にしている宝釵は、一見すると賢妻そのもの。しかし、彼女の現実的な経済観念は行き過ぎればがめつさに繋がるし、道徳に従順すぎて情に欠ける姿勢も、王夫人や邢夫人らの欠点に直結する。
まあそんな小難しいことはさておき、大家庭を舞台に繰り広げられるドタバタドラマを楽しむが吉の回である。

おまけ 宝玉君の女性観念by春燕
嫁ぐ前の女の子→値千金の宝珠さ!
嫁いで少しの若奥様→珠には違いないけど、光や彩りが消えている!こんなの死んだ珠だ!
その後→もはや珠ですらない! 魚の目玉だ! ファッキン!

気になる人物達
鶯児…前半の主役。しっかり者の主に比べて結構いい加減な性格をしている。凄い剣幕でやってきた春燕の叔母にうっかり冗談言っちゃうあたり、天然なのかもしれない。
春燕…宝玉の侍女見習い。今回が初登場にして後半の主役。大観園が出来上がった頃から仕えるようになった模様。
春燕の叔母…前回に引き続き騒ぎを引き起こし、今回も懲りずに暴れる。とらぶるめえかあとはこのことだ。
春燕の母…叔母に似てどうしようもない強欲な母親。
襲人…皆に慕われる宝玉の侍女。何だかんだで人に甘いところがある。
麝月…争いごとが起きると冷静な対処を見せる出来た侍女。すっかりキャラが確立しましたね。
晴雯…出てきたかと思ったら春燕の母親へ冷たい一言。「そんなババァ追い出しちゃえばぁ?」。口は災いのもとですよ、おねーさん。
薛宝釵…鶯児の口から彼女の倹約ぶりが語られる。上でも述べた通り、宝釵は男に嫁いだ途端汚い人間になってしまう典型例かもしれない。
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C.O.M.M.E.N.T

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