第六十九回 正妻を敵に回したら、妾は死ぬしかないじゃない!


・尤二姐は煕鳳に連れられて史太君にご挨拶。その美しさを褒める史太君。一方で、煕鳳は張華に対する裏工作を続けており、再び訴訟を起こさせる。が、賈蓉は張華に尤二姐を諦めて遠くへ逃げるようそそのかしていた。そのため、訴訟により尤二姐を追い出す計画は失敗。ぐぬぬ…と怒りが爆発しそうになるのを我慢して、ひとまず尤二姐と仲の良い姉妹を装う煕鳳。

・賈璉は賈赦からの用事を片づけて帰ってきた。賈赦は働きの褒美に、秋桐という名の若い妾をくれてやる。その後、煕鳳のもとへびくびくしながらご挨拶。何せ妾を二人も迎えてしまったのだ。が、驚いたことに、あの嫉妬深い妻が尤二姐と仲良くやっていてしかも普段よりにこにこしている。疑念を抱きながらもほっとする賈璉。

・こちら煕鳳、笑顔を装っていたが内心は爆発寸前。尤二姐を追い出さないうちに秋桐なんて小娘までが妾入りしてしまったのだ。尤二姐とは表向き仲良くしつつ、裏で悪い噂を流しまくる。
「ねえ妹さん、あなたのことを身持ちが悪いとか、珍さんと妙な関係があったとか、みんなが噂してるんですの」
そして賈璉の連れてきた秋桐という妾が、またとんでもないアバズレ女。煕鳳や平児に対してもデカイ態度をとるので、尤二姐に対しては一層厳しくあたる。
「おいこらぁ淫売! でかい顔してんじゃねーぞ!」

・尤二姐は日に日に元気が無くなっていった。今や届けられる食事も酷いものばかり。一時的に平児が自腹を切ってちゃんとした料理を運んでいたが、それを目ざとく見つけた秋桐が煕鳳へ進言。
「奥様ァ、平児のヤツが裏切ってますけどぉ~」
これには煕鳳もブチ切れ。
「人が猫を飼うのは鼠をとらせるためなのに、うちの猫は人様にかみつくんだね!」
以後、平児は尤二姐に味方したくても出来なくなってしまった。
大観園の姉妹の中には尤二姐の苦悩を知っている人間も少しはいたものの、彼女の心労の悪化は食い止められなかった。

・賈璉はといえば、新顔の秋桐にすっかり夢中。毎日彼女といちゃいちゃしていた。おのれ秋桐ォ!と憎さ百倍の煕鳳だったが、まずは秋桐を利用して尤二姐を片づけることを計画。毎日のように秋桐を呼びつけて尤二姐を重んじるよう説教→切れた秋桐が尤二姐へ喧嘩を売り込むor王夫人や史太君へ悪口を吹き込む→以下、尤二姐がボロボロになるまで無限ループ。やがて史太君も尤二姐の悪い評判を本気にするようになり、とうとう尤二姐の味方は殆どいなくなってしまう。

・すっかり病気になってしまった尤二姐の前に、尤三姐の幽霊が現れる。
「お姉さんったらほんとお人よしなんですから! あの賢妻ヅラした腹黒女の言葉なんか真に受けちゃってさ。あたしが生きてたらあのくそ女を剣で叩き切ってやったのに」
「いいの。私は身持ちが悪かったから、酷い目にあって当然だわ。辛くても、我慢していくつもりなの…」

・目が覚めると、賈璉がそこにいた。尤二姐は自分が身ごもっていることを告げるが、無事に産める見込みは少ない。賈璉はすぐに医者を呼ぶが、かかりつけの医者が不在なので、代わりの者に診療させた結果、変な薬を処方されて尤二姐は流産してしまう。怒り心頭の賈璉。煕鳳は内心小躍りしながらも、尤二姐の前ではおおっぴらに泣いてみせた。

・平児は病床の尤二姐をしきりに慰める。尤二姐は彼女の手をとり、しきりに感謝を述べた。
「こちらへ来てから、あなたにはずっと面倒をみていただきました。このご恩は、来世で必ずお返ししますわ。もうこの命は助かりそうにありません」
「そもそも私がいけなかったんです。私がバカ正直なばかりに、あなたのことを奥様の耳へ入れてしまったから…」
ひとしきり話をした後で、部屋を出ていく平児。残された尤二姐はぼんやりと考えた。
「病気は重くなり、子供も亡くなった。心残りは無くなったのだし、一思いに死んでしまおう」
生の金を呑めば体に傷をつけず死ねるだろうと、金塊を思い切って飲み込み、衣服を整えて寝床へ横になった。

・翌朝、尤二姐の死体が発見された。下男下女たちは今更になって、煕鳳に比べたら尤二姐はどれほど優しかったことかと後悔の念に襲われる。賈璉は泣きに泣いて、葬儀の準備をすすめた。煕鳳は夫に葬儀の金のことを聞かれてもしらばっくれていた。それを見かねた平児が、こっそり金を持ってきてくてたので、賈璉は上等の棺桶を買うのだった。

小言
尤三姐に続き、尤二姐ご退場の回。展開はかなり目まぐるしいが、登場人物が絞られているためそこまで混乱せずに読める。尤二姐と秋桐、同じ妾ながら百八十度違う描写が見もの。まあ煕鳳にとってはどちらも排除対象であることに変わりないんだけど。ちなみに秋桐はもともと部屋付きの侍女であり、妾といってもその地位は低い。賈赦が褒美として賈璉に与えたように、身分上は奴隷である。ただ、こういう輩に限って人から侮られたりしないよう気の強い性格になることが多い。妾の趙氏と同じパターンだろう。
また幽霊として登場とした尤二姐の口から、この世の情の因縁や警幻仙姑のことについて語られる。柳湘蓮の失踪といい、初期の伏線回収が少しずつ進められているのも見逃せない。

気になる人物達
王煕鳳…鬼だね、アンタ。
尤二姐…可哀そう過ぎる。
尤三姐…姐の臨終に現れ、キツイ言葉を投げる。
平児…影から尤二姐を助けようとしていたが、駄目でした。それにしてもなんていい子なんだ。
秋桐…もとは賈赦の侍女。十七歳。主人が枯れたオヤジなので性欲をもてあましていたところ、賈璉という若いイケメンに迎えられたので、本人は有頂天だった。妾という立場を考えれば、彼女のアバズレな生き方もあながち間違いとは言い切れない…のか?
賈璉…尤二姐の死はどう見てもあなたが原因!
賈蓉…裏であれこれ画策し、煕鳳の第一計画を破綻させた。知恵の回るやつ。
賈赦…栄国邸のエロ親父。大勢の妾を囲っているのは皆様ご存知の通り。が、秋桐はじめ若い娘連中には恨まれている模様。
史太君…最初は尤二姐を歓迎したが、悪い噂を聞いて徐々に疎むように。この回もそうだが、周囲が史太君をはばかって本当のことを言わないために、事態が悪化するというケースが多々ある。
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