2015_05
30
(Sat)23:13

紅楼夢 第七十二回

第七十二回 侍女達の結婚事情


・鴛鴦は司棋の一件を目にして以来、園内は不潔、このぶんだと他の場所はもっと不潔だろうと思い至り、ろくに外出もしなくなるように。

・司棋は例の従弟とは子供の頃から内緒に言い交わした仲だった。互いに思い合い、史太君の誕生祝いに乗じてようやく思いを遂げたのに…。鴛鴦に見つかって以来、寝食もままならぬ状態。そこへ従弟が逃げ出してしまったという知らせが届き、重い病気にかかってしまう。鴛鴦がお見舞いに来て、しきりと慰めるのだった。

・鴛鴦は王煕鳳がここ数日病気にかかっていると聞いたので、ついでに彼女の見舞いもすることに。ところが部屋の前で平児と出くわし、詳しく話を聞くと煕鳳は医者を呼ぶのを嫌がり、仕事に精を出している様子。

・そんなところへやってきた賈璉。実は史太君の誕生祝いで手持ちの銀子が無くなってしまったため、史太君のところから千両相当の金銀類をこっそり持ってきてくれないかと頼み込む。あんまりな相談に笑い出す鴛鴦。そこへ侍女見習いがあたふたと彼女を呼び出しに来たので、話も半ばで出て行ってしまう。

・王煕鳳は隣室でこっそり二人の話を聞いていた。賈璉は煕鳳を見舞いがてら、鴛鴦への依頼を煕鳳にも相談。
煕鳳「どうして私があなたの借金のためにお手伝いをしなきゃいけないのよ」
平児「いいじゃありませんか。奥様もちょうど百両ばかり銀子が必要なことですし、その千両から百両分お手伝いの礼金としていただいては?」
それもそうだと頷く煕鳳。が、賈璉が口をとがらせる。
賈璉「お前のとこには銀子がタンマリあるくせに、ケチな取引だなあ」
王煕鳳「馬鹿言わないでちょうだい! うちの王家がどれだけお金を持ってるっておっしゃるのよ。ご自分の家とうちをよっく見比べてみるがいいわ! 私はね、尤二姐さんの一周忌だからお見舞いをするためにお金を使おうと思っていたのよ」
 それを聞いて考え直す賈璉だった。

・そこへ旺児の女房がやってくる。なんでも息子に王夫人の侍女・彩霞と縁談を結ぼうとしたが、彩霞の方では頑として受けてくれないのだという。賈璉は旺児が煕鳳の下男の中でも力のある存在だと知っていたので、自分が仲人をしてやると進言。煕鳳も横から口を入れる。
「助けてあげるけど、その代わりご亭主に伝えてちょうだい。貸し付けてあるお金をしっかり回収するようにってね。この件ではあちこちから随分恨まれたんだから。そうでなくても、近頃は出費ばかりが多くて、とてもやりくり出来たものではないわ。この前は黄金づくりの時計を売り払ったけど、半月もしないうちにそのお金は無くなったし。つい最近は、誰かさんがご隠居様のお部屋の物まで質入れするって言うしさ」

・話をしていたところへ、またしても来客。今度は太監(宦官の敬称)の遣いである。聞けば銀子を二百両貸して欲しいとの頼みごと。煕鳳はやれやれと、自分のところから金の腕輪を出して与えてやる。実はつい昨日も別の太監から銀子の無心をされたばかりだった。

・煕鳳のもとを去った賈璉は林之孝に会い、賈雨村が降職になっただの、屋敷は人が多すぎるので減らした方がいいだの、あれこれと雑談したついでに、彩霞と旺児の結婚について相談する。
林之孝「その縁談はおやめになった方が…。旺児の息子ときたら大酒飲みのばくち狂いでして。彩霞は会ったことこそありませんが、人の噂では結構な器量良しとか。むざむざ人の一生を台無しにすることはありますまい」
 そうだったのか、だったらやめた方がいいと考えを改める賈璉。

・一方、王煕鳳は彩霞の母を呼びつけ、縁談に応じるよう説得中。主人格の命令とあって、彩霞の母は内心いやいやながらも承伏。そこへ戻ってきた賈璉は林之孝の話を伝えるが、煕鳳はもう決まったことだからと譲らない。結局、話はそれまでとなった。

・とうの彩霞は賈環に対して気があったのだが、何せ主と奴隷のことなので自分からは言い出せない。しかも旺児との縁談はまとまりかかっている様子。そこで妹の小霞を趙氏のもとへ遣いに出した。

・趙氏にとっても彩霞は頼りになる存在、何とか環の妾にしたいと賈政へ頼み込む。
賈政「急ぐ必要はない。宝玉と環にはもう数年学問をさせたら妾を入れてやるつもりだ。わしの方でも侍女には目星をつけてある」
趙氏「あらっ、宝玉様にはもう二年も前から妾がおりますのに、旦那様はご存じなかったんですの?」
賈政「なにィ、一体誰を妾にやったというのだ?」

待て次回!

小言
少しずつ物語に暗い影が差し始めている。今や賈家の家計は深刻な銀子不足。手元の金ではやりくりが出来ないため、次々に家の品物を質入れしているのだ。第五十三回にも増してヤバい状況である。また王煕鳳自身も悪質な高利貸しで散々人から恨みを買っている状況。そこで今回、銀子回収に乗り出したわけである。
ちなみに太監達の銀子無心に関しては、突っぱねればいいじゃんという意見もあるかもしれない。が、何せ賈家は大金持ちの名で通っているから、数百両ばかりの金も貸してくれないとあってはこれまでの評判に傷がついてしまうし、周囲からも良くない噂を立てられてしまう。このあたり、面子第一の中国人らしさが見え隠れしている。
後半は彩霞の結婚に関して。封建制度下の社会では、基本的に親が結婚相手を決める。この点は宝玉や黛玉といった主人格でも変わらない。が、奴隷身分となるともっと悲惨で、両親すら結婚の決定権を持っていない。彼らのお相手を決めるのは主である。主からすれば奴隷なんて「物」なので、別に当人達の事情なんか知ったこっちゃないのだ。今回の煕鳳にしても、下男の旺児が頼れる右腕なので、彼が今後もしっかり働いてくれるよう、彩霞の縁談を手助けしてやることにしたわけ。

気になる人物達
王煕鳳…家計を維持するのに苦労している。頑張っても頑張っても、他人からの恨み言や不満ばかりが増える始末。若嫁は辛いよ。
賈璉…役立たずな亭主。でも、林之孝から彩霞のことを聞いて縁談に反対するくらいの思いやりはある。
平児…主の病を気にかけるが、かえって怒りを買ってしまう。
鴛鴦…もはや彼女にとって屋敷は不浄の地でしかない。
司棋…前回もちょっと触れたが、お嬢様付きの上級侍女なので、自分の密事がばれたとあってはおちおち安心も出来まい。エリートの傷は凡人のそれと違うからね。
趙氏…自分のためとはいえ、彩霞のために婚礼の話を進めてやる。
賈政…日頃仕事で忙しく、家庭内の事情にも疎い。宝玉が妾をとっていることすら知らなかった。まあ以前も、襲人の名前すら知らなかったくらいだしね。
彩霞…本人はいずれ環の妾に…という願望があるため、今回の縁談を嫌がる。しかし決定権を持っているのは主人であるため、どうしようもならず。
賈環…別に彩霞のことなんて何とも思っていなかった。長いこと一緒にいるんだから、相手の気持ちくらい気づいてやれよ。
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C.O.M.M.E.N.T

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