2015_06
14
(Sun)21:11

紅楼夢 第七十九回

第七十九回 THE・ABAZURE


・宝玉が晴雯の祭文を書いたところへやってきた林黛玉。その出来映えに感動する。黛玉はアドバイスを加え、二人で祭文を完璧な形へ手直しするのだった。

・賈迎春が嫁ぐこととなった。相手は先代以来つき合いのある孫家の息子。史太君も賈政もこの孫家を毛嫌いしていたが、何分父親の賈赦が乗り気なので結局縁談は成立した。

・迎春の嫁入りにげんなりしていた宝玉のもとへ、香菱がやってくる。ちょうど薛蟠も嫁を迎えるところだったので、香菱も近頃は大観園へ遊びに来れなかったのだった。
「旦那様がお迎えになる夏家のお嬢様は、美しいだけでなくて読み書きの心得もあるそうなんです。あたくし、その方が来るのが楽しみですの。また詩のたしなみのある方が増えるんですもの」
 楽しそうに語る香菱に、思わず冷笑する宝玉。
「私には君の先々のことが心配だけどね」
 楽しみをぶち壊すようなその言い草に、香菱は腹を立てて立ち去ってしまうのだった。

・その晩、宝玉は近頃続いた悲しい出来事を思い出して病気になってしまう。その重病ぶりは史太君が直々に見舞いへ来るほど。王夫人も、今更になって晴雯を追い出したことを後悔する(おせーよ!)。
 やがて快方に向かった宝玉だが、仲良しだった女の子達がいなくなった憂さを晴らすように、連日遊びほうけているのだった。

・香菱は宝玉と喧嘩してから大観園に立ち入らなくなり、夏家のお嬢様が輿入れする日を楽しみにしていた。正妻がいれば妾としての務めも楽になるし、相手は才色兼備の佳人と聞いたからきっと大人しやかで素敵な方に違いない…。
 が、ついにやってきたその嫁・夏金桂は美しい見た目と反比例するかのような超アバズレ女だった。
金桂「あたし正妻として輿入れするんだし、下の連中になめられるわけにはいかないわ。まずあの傲慢な薛蟠の鼻っ柱を追って、いけ好かない妾の香菱にも生意気言わせないようにしなくっちゃ☆」
 果たして、嫁いで数ヶ月もしないうちに薛蟠の言うことを聞かなくなる金桂。最初は薛蟠も何とかコントロールしようとしていたが、やがて手がつけられなくなり、毎日嫁に怯えて暮らす日々。薛蟠を制覇した金桂は続いて薛未亡人のお人好しぶりにつけ込み、さらに宝釵を言いなりにしようとしたが、さすがに宝釵は強者で、なかなか隙がない。

・ある日、香菱相手にしゃべっていた金桂。
金桂「あんたどこの生まれ?」
香菱「わかりません」
金桂「両親は?」
香菱「わかりません」
別に香菱は正直に答えているだけだったのだが、金桂は相手が反抗しているのだと認識。さっそく敵意をむき出しにする。
金桂「あんたの名前は誰がつけたの?」
香菱「宝釵お嬢様ですわ」
金桂「へえ! お嬢様は出来がいい方だと聞くけど、ネーミングセンスはあんまりよくないわねえ」
 思わず笑い出してしまう香菱。
「まあ、うちのお嬢様の学問の出来は、政様がお褒めになるくらいなんですのよ!」
 ああ、それと気づかず地雷を踏んでしまった香菱! 待て次回!

小言
紅楼夢屈指のスーパーアバズレ娘、夏金桂初登場の回。顔も性格もいいご令嬢が殆どの紅楼夢にあって、あまりにあんまりな金桂の存在は、ある意味輝いている。まあこれまでも趙氏とか秋桐とかがいたんだけど、そんな連中が軒並み可愛く見えてしまうほど。まさに宝玉のいう、嫁いだ娘はダメになるの典型例だろう。
これまでの経過をご覧になってきた読者はお気づきだろうが、女児は嫁いでしまうと家庭内での地位が著しく低くなる。実家にいる間は花よ花よのお嬢様だが、嫁いでしまえば周囲は血のつながらない他人ばかりなのだ。そんなわけで、金桂のように「嫁ぎ先で馬鹿にされるわけにはいかない」という心理が働く。これは大なり小なり王煕鳳や李紈のような人間も同じことで、煕鳳のように何かと自分の立場を持ち上げるべく奔走する者や、李紈のように慎ましく暮らして周囲の評価をあげようとする者もいる。金桂のやり方も、周囲への甚大な被害は別として、当時の女児が家庭内で自分の地位を確率する一つの手段だったことは確かだろう。

気になる人物達
賈宝玉…悲しい出来事の連続でライフゲージ真っ赤っか。でもさらに悲劇は続く。
林黛玉…宝玉の「芙蓉女児への哀悼」に感動。病気が以前より進行している模様。
賈迎春…ヤバそうな家へ嫁ぐことになってしまった。ご存じの通り、史太君からの愛情も低いので、殆ど気にかけて貰えなかった。
香菱…正妻が嫁いでくるのを楽しみにしていたが…やってきたのは化け物でした。
夏金桂…紅楼夢版藩金蓮(藩金蓮は明代の通俗小説「金瓶梅」のヒロイン。超じゃじゃ馬)とでもいうべきアバズレ女。実家でちやほやされたせいでこんな性格になってしまった模様。ある意味、薛蟠とは激しくお似合いなカップル。
薛蟠…金桂と結婚。馬鹿大将ざまあみろ、といいたいが正直いってコイツより周囲への被害が大きすぎる。
薛宝釵…金桂でさえ容易に攻略出来ない我らがスーパーヒロイン。
スポンサーサイト

C.O.M.M.E.N.T

コメントの投稿

非公開コメント

トラックバック