第八十五回 薛蟠は二度人を殺す


・巧姐の薬をぶちまけた一件で大喧嘩する趙氏と賈環。結局、趙氏も王煕鳳へは謝罪無し。王熙鳳と趙氏はこれがきっかけでますます互いを憎むように。

・その日が北静王サマのお誕生日とあって、賈家の一同で祝いにうかがう。久しぶりに宝玉と対面した北静王は、彼と親しげに言葉を交わすのだった。

・屋敷へ戻ると、工部の局長に欠員が出たとかで、その後任には賈政が選ばれるとの噂が。

・宝玉が史太君と奥方一同へ帰宅の挨拶に向かうと、何故か彼女たちは揃ってにこにこ顔。何かめでたいことがあったようだが、宝玉にはサッパリ。部屋へ戻り、さっそく襲人に聞いてみる。
宝玉「お婆様と鳳ねえさんが何だか良くわからないことで盛り上がってたみたいだけど、何なんだろ?」
襲人「(本当は知っているくせに)さあ、わたくしにも何のことだか。ところで、そのお席に黛玉様はいらしたんですか?」
宝玉「いや、まだ病気が良くなったばかりだし、いなかったよ」

・襲人は宝玉の結婚相手が決まったのだと察しがついていた。早速、事実を確認すべく黛玉の部屋へ。しかし、あれこれ話してみたものの証拠は掴めない。

・帰り道、襲人は賈芸に出会い、宝玉宛の手紙を渡される。その手紙を読んだ宝玉は、真っ赤になって手紙を破り捨ててしまった。お節介にも、彼へ縁談をすすめる手紙(ちなみに、お相手は賈家の者ではなく外部の人)だったのだ。

・翌日、賈政が噂通り出世したという知らせが舞い込んで喜ぶ宝玉。史太君のもとへ行くと、おなじみの姉妹達も顔をそろえている。さっそくお祝いの宴が開かれた。そんな中、黛玉は宝釵の姿が見えないのを気にかける。
黛玉「叔母様、宝お姉さまは元気ですの?」
薛未亡人「ええ。ただ家を留守番する者がいないので、残って貰ってるんですよ。また次の機会にはあの子を呼んで、その時にお話しすればいいでしょう」

・芝居が開かれる中、薛未亡人のところへ慌ただしく知らせが入る。部屋に戻ると、何と薛蟠が出先で人を殺してしまい、投獄されたとのこと。ここぞとばかり喚き出す金桂。
「おーおー、以前はこの家じゃ人を殺してもお咎めなしで入京したってご自慢してましたよネー。そしてまた人殺しとはネー。日頃えばってるくせに、へへん、随分浮き足立ってるみたいじゃーん。あ~旦那が死んだらあたしどーしよー」
 逆上して気を失ってしまう薛未亡人。宝釵は下男が持ってきた書状を見て、兄が今回ばかりは助かりそうにないことを感じるのだった。

小言
宝玉縁談編の後編。当時、結婚を控えた女子は式の当日まで会ってはならない決まりがあった。そのため宝釵は宴席や皆の集まりにも顔を出さないわけ。でも、実際に宝釵を宝玉の妻にするとはっきり書かれている箇所が無いので、初見の読者は混乱するだろう。肝心なところの描写がぼかされがちなのも、紅楼夢の特徴だったりする。
一方、賈政の出世で久方ぶりにハッピーな賈家一同。そんなところへもたらされる薛蟠の殺害事件。まあこんなバカ殿がどうなろうと読者としては痛くも痒くも無いのだが、薛家にしてみればそうもいかない。ちなみにこの事件、物語の終盤まで尾を引き、結局薛家没落のきっかけとなってしまう。

気になる人物達
賈宝玉…水面下で縁談が進んでいたとは露知らず。賈政の出世祝いの席では、久々に姉妹と顔を合わせて浮かれていた。おいおい。
林黛玉…こちらも縁談については知らぬまま。知っていたら血を吐くどころの騒ぎじゃ無くなってるだろうけど。
薛宝釵…もう自分が宝玉の結婚相手ということは知らされている。そんな彼女の内心については実際の描写も余り多くないため、諸々の考察本などで研究されている。
襲人…主の結婚事情について裏でこそこそ嗅ぎ回る。うわあ…。
麝月…晴雯がいなくなったせいか、以前より目立つ存在に。ちょっと性格が変わった気がする。
紫鵑…主のお世話の合間に花を摘んでいた。かわいい。
北静王…かなり久々のご登場。実は紅楼夢屈指のいい男はこの人かも知れない。
賈政…工部の局長ポジションに出世。めでたい!と思った矢先に…。
賈芸…こちらも久々のご登場。前八十回では割とまともな人間だったが、後四十回ではどういうわけか小悪党みたいな人物になってしまっている。ガッカリ。彼の顛末や小紅との恋愛模様については、後の回でまた詳しく。
薛未亡人…このところ災難続きな奥様。
夏金桂…お前少し黙ってろ。
薛蟠…人殺しツーカウント。何があったのか、詳しくは次回にて。
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