2015_10
03
(Sat)23:17

紅楼夢 第八十七回

第八十七回 俗世って、いいものかしら


・宝釵が人を遣わせて、黛玉に手紙を送ってきた。そこには、近頃災難続きな薛家について語られており、四節の詩が添えられていた。黛玉は姉と慕っている宝釵のために悲しんだ。そこへ、賈探春達が遊びにやってくる。
黛玉「宝釵お姉様とは最近めっきり会ってないわ。何かあったのかしら」
探春「いずれまた会えるわ。あっちの家はお嫁さんがどうしようもないし、今度はお兄様の殺人事件があったりで、今はとても忙しいのよ」
そこへ秋風にのって花の香り。黛玉は故郷の木犀を思い出し、姉妹達が帰った後も感傷的な気分に。
黛玉「ああ、故郷にいた頃の日々はとても素晴らしかったわ……。それなのに、今は他人の家で独りぼっちだなって」
上着を羽織ろうとした時、黛玉は見慣れぬ絹の包みを見つける。中に入っていたのは使い古しのハンカチ、ちぎれた香袋と扇袋、それに房飾り…どれも宝玉との思い出がある品だった。あの方とは悲しいことが色々あったなぁ、と黛玉は涙に暮れる。そして宝釵の手紙にあった四節の詩を思い出し、自分も詩を作ろうと決意。詩を書き上げると、それをさらに琴譜へ落とし込み、曲として弾くのだった。

・賈宝玉は塾が休みなので出かけることに。黛玉は寝込んでいるので、ふと惜春の住まいである寥風軒を訪れれば、妙玉と惜春が囲碁勝負の真っ最中。どうも妙玉が惜春を圧倒している様子。宝玉はさっそく乗り込むが、いつもの調子で軽口を叩いてしまい、気まずい雰囲気に。

・帰りがけに、琴の音が聞こえてくる。黛玉が弾いているのだと知り、宝玉と妙玉はそれに耳を傾ける。妙玉はその曲があまりにネガティブなので顔色を変える。そして、あたかも暗示のように弦が切れ、曲は中断してしまうのだった。

・庵に戻った妙玉は座禅にふけるが、天井の瓦が揺れたり、外で二匹の猫がにゃあにゃあ色っぽく鳴いたりするので、まるで集中できない。不意に賊に襲われる夢を見て、彼女は精神に異常をきたしてしまう。翌日になって医者が呼ばれ、どうにか様態は落ち着いた。しかしこの話が外に漏れ、ゲスな輩は「あんなに別嬪な尼さんなんだから、男無しで辛抱出来るわけねえよ」と心ない言葉を吐くのだった。

・惜春は侍女から妙玉の病気について聞き、いささか複雑な気持ちに。
「あの方を尊敬していたけれど、どうも俗世に未練たらたらなのね。私だったら、絶対そんなことないのに」
 ふと思い立ち、香を焚いて座禅にふける惜春だった。

小言
俗世にこそ安寧があるのか、それとも解脱にこそ安寧があるのか。そんなテーマが語られる回。が、結局はどっちも救いはアリマセン、というあんまりな答え。並外れた佳人であるはずのは宝釵と黛玉が不幸に見舞われ、世俗と離れたところで暮らしているはずの妙玉もまた、人としての幸せを享受できない立場にいる。原作者の曹雪芹の内容がどれくらい汲まれているのかは不明だが、強いメッセージ性もあって心揺さぶられる回。

おまけ 黛ちゃんの悲しい思い出グッズ
古物のハンカチ…第三十四回登場。宝玉が親父にケツを叩かれて重傷を負っていた時に、黛玉へくれたもの。気持ちが昂った彼女は、ハンカチに詩を書いている。感傷ポイント+3。
香袋…第十七回登場。宝玉のために作っていたのだが、彼と喧嘩した時、腹立ちまぎれに鋏でチョキチョキしてしまった。感傷ポイント+6。
通霊宝玉の房…第二十九回登場。宝玉と喧嘩して彼が通霊宝玉を破壊しようとした際、鋏でチョキチョキしてしまったもの。この時、興奮した黛玉は血を吐いている。感傷ポイント+9。
扇袋…三十二回にて言及。もとは史湘雲が宝玉のために作ったもの。宝玉が「この扇袋の模様すごいよォ!」と見せびらかしていたのにイライラして、黛ちゃんが鋏で真っ二つに切断。感傷…というか八つ当たりポイント+5。*錦埜様、ご指摘ありがとうございます!

気になる人物達
林黛玉…宝釵の四連詩に触発されて、自分も作詩。しかもそれを曲にして弾いてしまうという才女ぶりを発揮。でも、出来上がった曲は凄く暗い。瀟湘館みたいに物静かな場所からそんな曲が聞こえてきたら、かなりホラーだと思うんですけど。
薛宝釵…打たれ強い彼女も、近頃の不幸の絨毯爆撃にはさすがにウンザリしている模様。
探春・湘雲・李紋・李綺…黛玉の部屋へ遊びにきた姉妹達。探春はその口振りからして、宝釵の結婚についても知っているような感じ。李姉妹は相変わらずの空気。
紫鵑・雪雁…数分おきに鬱モードになる主を頑張って慰める。今回はおいしそうな料理を出して主の気を惹こうとしたが失敗。
柳五児…厨房の柳のかみさんの娘。黛玉と紫鵑の会話で登場。芳官が追い出されてしまったこともあり、まだ宝玉の部屋には入れないでいる模様。容貌が優れていることを、お嬢様である黛玉ですら知っているあたり、相当な美人なのだろう。ちなみに原案では柳五児は既に亡くなっている設定なので、ここは明らかに続作者が書き加えた部分だろう。
賈宝玉…妙玉と久々に会う。黛玉の琴については、妙玉ほど造詣がないので理解が及ばなかった。
妙玉…後半の主役。ちょっと俗世に顔を出した途端、あっちこっちから誘惑されて修行もままならず。座禅中に見た夢を勝手に解釈するなら、彼女は南を故郷とする良家のお嬢様で、あちこちから縁談の話があった。ところが賊に襲われて全てを失い、やむなく出家の身になった……という感じだろうか。彼女の真の悲劇はまた後ほど。
惜春…妙玉をリスペクトしていたが、彼女の修行の不徹底なところが気に入らなかった様子。
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C.O.M.M.E.N.T

「黛ちゃんの悲しい思い出グッズ」が笑えます。ケンカした腹いせにハサミでちょん切った残骸を、大事にとっておく神経は???。あとで、これをネタに、なにかするつもりだったんでしょうか。かえって不利なネタになりそうなのに…。片付けポイント-3ですね。
 香袋は自分が作りかけていたのでしたが、扇袋は、第32回に史湘雲の作品と知らずに黛玉が切ってしまったものじゃないですか? 八つ当たり黛ちゃんマイナス5ポイントぐらいでしょう。

2015/10/04 (Sun) 18:22 | にしきの #a2H6GHBU | URL | 編集 | 返信

Re: タイトルなし

ようやくレビュー再開しました。85回の更新からもう2か月近く経ってるんですね。なんてこったい。
そしてさっそくのコメント&ご指摘ありがとうございました。扇袋は香袋と同じタイミングで切り裂いたのかと思ってましたが、違いましたね。32回を読み返してみたら、湘雲が可哀そうに思いました。貧乏暇無しで頑張って作ったものをチョキチョキやられたんじゃ、そりゃ腹も立ちますね。
レビューは一応、年内目標で終わらせたいと思っています。

2015/10/04 (Sun) 22:50 | 春秋梅菊 #- | URL | 編集 | 返信

紅楼夢レビュー、年内に完成したら、凄すぎます! 最近ハッと気が付いたのですが、今年はいちおう、原作者の曹雪芹の生誕300年目でした。(生没年に諸説ありますけど。)曹雪芹先生も、草葉のかげで喜んでますよ、きっと。

2015/10/05 (Mon) 21:12 | にしきの #a2H6GHBU | URL | 編集 | 返信

Re: タイトルなし

にしきの様
本当は秋に終わらせる目標だったので、現時点で大分遅れている感じです(ちなみにレビューは順番にブログへ投稿していますが、お気に入りの回は順序をすっ飛ばして書き終えていたりします(笑))。まあ急ぐ理由があるのかといえばそういうわけでもないのですが…ダラダラやるのも良くないかな、と。まだ三国志や水滸伝も控えていますしね。
曹雪芹先生の生誕300年ということであれば、俄然気合も入ります!

2015/10/06 (Tue) 00:58 | 春秋梅菊 #- | URL | 編集 | 返信

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