第八十九回 恋愛は死ぬことと見つけたり



・工部から、黄河が決壊による洪水が起きたとの知らせ。修理工事のため、賈政が毎日役所へ出かけるように。親父の監視が無くなり、勉強をサボり始める宝玉。

・ある日の塾帰り、空気も冷え込んできたので宝玉のために上着を持ってきた茗烟。ところが、それは亡くなった晴雯が彼のために繕った雀金裘だった。晴雯のことを思い出し、すっかり気落ちする宝玉。ああ、物はあっても人は無し。

・そして翌日。侍女達をあれこれ言いくるめると、かつて晴雯の住んでいた部屋に果物を並べ、お香を焚く宝玉だった。

・その後黛玉のところへ遊びに行く宝玉。黛玉はちょうど写経をしていたところだった。先日聞いた琴のトークに興じたりするが、黛玉は宝玉の口振りがいつになくぎこちないので戸惑ってしまう。

・黛玉のお世話を済ませた紫鵑は、同僚の雪雁がぼんやりしているのを見て声をかけた。
「どうかしたの?」
「まあ、お姉様。驚かさないで。あたし大変な話を聞きましたの。なんでも宝玉様が婚約なさるって…」
「えっ、誰と?」
「探春お嬢様に仕えてる待書さんに聞いたんですけど、知事様のおうちの方で、お金もあれば人柄もいいお嬢様ですって」
 仰天した紫鵑は、さらに雪雁を問いただす。何でも史太君の命令で、宝玉に縁談のわがままを言わせないよう皆の口を封じているのだとか。
 その時、いきなり泣き出す潚湘館の鸚鵡。
「姫様のお帰りよっ! 早くお茶を出さんかい!」
 紫鵑と雪雁が部屋に入ると、そこにはゼーゼー喘いでいる黛玉の姿が。話に夢中で主をほっぽらかしてしまい、紫鵑が申し訳なさそうに言う。
「お茶が入用ですか、それともお湯にしましょうか…」
「あんた達二人とも、どこへ行ってたのよっ! 呼んでもまるで来やしないんだから!」
ぷんすかしながら、寝床に横たわる黛玉。

・で、その黛玉、実は紫鵑と雪雁の話を大体聞いてしまっていた。両親もおらず、将来の見通しも無い。愛する人は自分を捨てて行ってしまう。胸が張り裂けんばかりの大ダメージを負い…彼女の出した結論は。
「もういい。死のう」

・自殺する気マンマンの黛玉は、早速その日から不健康な生活スタイルに切り替え開始。食事を口にしないのはもちろん、写経で神経をすり減らしたり、寝る時にも布団を被らなかったりと、ガンガン体力を消耗させていく。そんな主に振り回される侍女二人。宝玉が何度か見舞いに来たが、結局胸の内を伝えられない黛玉、ただ日々が過ぎていく。
やがて黛玉は粥もすすれないほど弱り、人の話が全部「宝玉の婚礼の話題」に聞こえたり、宝玉の侍女達を見ては「結婚の支度をしている」ように見えたり、もはや完全に錯乱状態。

果たして彼女の運命は? 待て次回

小言
物語はここに来て急展開。黛玉が宝玉の縁談(デマだけど)を知ってしまい、自らの体を弱らせて自殺をはかる。そんなことやってないで本音をぶちまけちゃえばいいじゃん、という方もおられるだろうが、何せ当時は封建社会。自分の恋心を人前に明かすことなど出来るはずがないのだ。だからといって黛玉の行動が正しいかといえば、うーむ難しい。

気になる人物達
林黛玉…自殺を決意。その開き直りっぷりは「嬌紅記」の嬌娘を連想させる。
紫鵑…主の異変を怪しみつつも、その真相に気がつくことが出来ず。とにかく一生懸命お世話の毎日。頑張り屋のいい子なんだけれども、聡明さにかけては襲人らに劣るところがあるかも?
雪雁…黛玉の侍女。こっちは紫鵑よりもっとダメ。
賈宝玉…オヤジがいなくなって勉強もサボりまくりだぜ、と思ったら晴雯との思い出の品を見つけてガックシ。
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