第九十回 復活!


・もはや息絶え絶えの黛玉。見舞いにきた史太君もその様態がただごとではないので、紫鵑達を問いただす。が、まさか恋の病だとは言えるはずもなく、真相は伝わらずじまい。

・ある日、もう黛玉様も最期だと、紫鵑が慌ただしく史太君達を呼びにいく。そんな折り、探春が待書を見舞いに寄越したので、雪雁は先日の一件を混ぜっ返す。
「宝玉様の縁談が決まったって、本当なのよね?」
「ああ、あれですか? 決まってないですよ。というか、あれは奥様が取り入るために言い出したことなんですって。ご隠居様がおっしゃるには、宝玉様のお相手は別の方で、それも園内の方だとか…」
 そこへ戻ってきた紫鵑が慌てて二人をたしなめる。
「あなた達ったら、こんなところでそんな話をしないでよ。黛玉様に聞こえたらどうするの!」

・で、こちら黛玉。死にかけながらも、実は待書と雪雁の話をおぼろげながら聞いていた。エンダン、マトマラズ? ホーギョクサンノ、オアイテハ、エンナイノ、ダレカ? 
 と、いうことは……そんなの私しかいない!
 みるみる生気が戻っていく黛玉。史太君らはじめ奥方一同が見舞いへやってきた時には、先程の重病ぶりもどこへやら、いくらか体調を取り戻していた。ぽかんとする紫鵑。
「さっきはもう駄目かと思い、お知らせにあがったのですけれど……」
 何はともあれ、安心してその場を引き取る奥方達。紫鵑と雪雁も胸をなで下ろし、これからは滅多なことを口にしないよう互いに約束するのだった。

・が、ある程度日が過ぎると、やはり今回の黛玉の病気はおかしいと疑う奥方達。
史太君「宝玉と黛玉も子供の頃から一緒だから、ああして放っておいたけれど、近頃は男女のこともわかってきたようだ。今回の病気のことといい、お前達はどうするべきだと思うかね? 黛玉はあの通り体も弱い。私としては、やっぱり宝釵と宝玉を一緒にすべきだと思うんだよ」
王夫人「ご隠居様のおっしゃるとおりでございます。でも、黛玉にもどこか嫁ぎ先を探してあげなくてはなりませんね」
史太君「まあ順番としては宝玉が先で、黛玉は後でもよかろう。あとは、宝玉と宝釵の縁談は内密にしておくんだよ」
 史太君の命令で、王煕鳳らは箝口令を敷く。

・ある日、王煕鳳は邢岫烟の部屋で窃盗騒ぎが起きたのを聞きつける。何でも、花園の番をしていた老女の息子が盗みを邢岫烟
の部屋から物を盗んだらしい。王煕鳳はその老女が口さがないので追い出そうとするが、邢岫烟に止められて許すことに。

・王煕鳳の前では平気な振りをしていた邢岫烟だったが、内心は下の人間に馬鹿にされたところを見られて恥ずかしい思いだった。そんなところへ、煕鳳の侍女・豊児が着物を届けに来る。貧しくても心の気高い邢岫烟を思いやってのことだった。

・最近めっきり家運の落ち込んでいる薛家。老女が邢岫烟の家で起きたことを薛未亡人らに話すと、皆は一様に落ち込んだ。
薛蝌は結婚相手である邢岫烟の不幸を思い、一人部屋で嘆く。気持ちに任せて詩を書いてみたりした矢先、薛噃の妾・宝蟾が部屋へ入ってくる。
宝蟾「うちの奥様から、若様へ果物とお酒のお届け物です」
薛蝌「これはどうも。お心遣い恐縮です」
宝蟾「とんでもありません。若様のおかげで、うちの旦那様の命を繋ぎ止めることが出来たんですから! まあ、この家はとやかくうるさいですから、今日はお気持ちだけということで、この果物とお酒を持ってきたのです」
薛蝌「そういうことなら受け取りましょう。でも僕はお酒が弱いので、そちらは持ち帰ってくれませんか」
宝蟾「まあ困りますわ。私がお酒を持って帰ったら、奥様に叱られてしまいますもの。それにもしかしたら…奥様の方から若様へお礼にあがるかもしれませんし」
謎めいた一言を残して去っていく宝蟾。薛蝌は夏金桂の性格を承知しているので、この贈り物は何か裏があるのでは、と疑うのだった。

次回を待て

小言
前回に引き続き重病の黛玉…があっさり回復。何とも肩透かしを食らう回。が、実は今回の展開は後の伏線になっていたりする。
黛玉のエピソードが一段落した後は、久しぶりに邢岫烟へスポットがあてられる。しかし、話の内容も第五十七回の時と殆ど同じでふくらみが感じられない。前回の晴雯の話もそうだったが、後四十回ではいちいち過去の話を取り上げる割に、掘り下げが薄いのが特徴。邢岫烟の清く正しい人柄は既に読者周知のことだし、改めてここでしつこく強調する必要があったのかは疑問。

気になる人物達
林黛玉…宝玉の結婚話がデマと知り、あっさり自殺をキャンセル。しかし、今回で体を損ねたことが明らかに後の体調不良に繋がっている。
紫鵑・雪雁…主に振り回されて可哀想な苦労人たち。
待書…探春の侍女。いーかげんな噂をばらまいた張本人。いや、悪気はないんでしょうけど。
史太君…さすがに宝玉と黛玉の異変に気がついた模様。
王煕鳳…彼女も最近健康を崩し気味だが、史太君のいいつけでますます仕事に精を出す。岫烟ちゃんのことは顔を合わせた当初から気にかけている。
邢岫烟…清く正しい貧乏お嬢様。出番があるのはいいんだけれど、今回のエピソードはもうちょっと何とかなりませんかね。
薛未亡人…すっかり元気を無くしている。息子のことは半ばどうでもよくなった様子。
薛蝌…婚礼相手の邢岫烟を気に掛けるいい男ぶりを見せる。
宝蟾…あからさまにアヤシイ贈り物を届けに来た夏金桂の侍女にして、現在は薛噃の妾。詳しくはまた次回。

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