2015_10
12
(Mon)21:55

紅楼夢 第九十二回

第九十二回 恋をする時はね、誰にも邪魔されず 自由で なんというか 救われてなきゃあ ダメなんだ


・オヤジの呼び出しと聞いて駆けつけた宝玉だが、それは彼を早く帰宅させるため、襲人達のついた嘘だった。すっかり脱力する宝玉。
襲人「どうして帰りが遅くなりましたの?」
宝玉「ん~黛ちゃんのところにいたんだよ。禅問答してたんだ」
襲人「お坊さまでもないのに、何でそんなことをするんです」
宝玉「僕と黛ちゃんには二人だけの道理があるんだよ。昔と違って、僕が口を滑らせることも減ったし、黛ちゃんもやたら怒らなくなったしね。でも、最近はなかなか会えなくなったから、何だかかえってよそよそしい感じだな」
襲人「男女の仲はそうあるべきです。いつまでも子供じゃないんですから」

・翌日、消寒会(冬に入った後、親しい人達を呼んで楽しむパーティー。別名、暖冬会とも)が開かれることに。宝玉は久しぶりに姉妹達と会えるとあって、早くに起きて史太君のもとへ駆けつける。が、来ていたのは巧姐だけだった。
巧姐「おかあさまがね、宝玉叔父様を呼んでお話したいって言ってたのよ。あたし、お勉強して字を読めるようになったのに、おかあさまは全然信じてくれないの」
史太君「お前のお母さんは字が読めないから、お前が嘘を言ってるなんて思うのだね。じゃ、明日にでもこの叔父さんにお勉強の成果を見てもらいなさい」
 宝玉は、巧姐が字を読めても、文章の意味まではわかるまいと講釈を始める。すっかり聞き終えた巧姐は話題を変えた。
「そういえば、小紅を叔父様の部屋から貰った後で、誰か他の侍女を入れるってお話でしたけど、あの柳五児という子を叔父様が気に入るかどうか、おかあさまが心配してましたわ」
「誰を入れてくれてもいいよ」
 宝玉は、柳五児の器量が過ぎるので、またしても晴雯のようになりはしないかと心配するのだった。
 やがて、大観園の姉妹をはじめ家族一同が集まってくる。宝玉は姉妹達の顔ぶれに薛宝釵と邢岫烟がいないのに気づくが、薛未亡人にごまかされてしまった。

・王煕鳳も宴席に顔を出していなかったが、そこへ慌ただしい知らせが届いた。何でも、屋敷を追い出された迎春の侍女・司棋が自殺したという。

・ある日、実家で暮らしていた司棋のもとへ、逐電したはずの従兄・藩又安がやってきた。一度夫と決めた人だけに、司棋は彼と結婚するといって聞かない。母親が断固反対すると、司棋はいきなり壁に頭をぶつけて果てた。娘の葬儀代を払えと、藩又安に食ってかかる母親。
「そのことなら心配ありません。僕はよそでお金をこしらえ、彼女を迎えに来るために戻ったのですから」
 そして懐から金の小間物を取り出してみせる。途端に態度を変える母親。
「あんた、金があるならどうして最初に言わないの!」
「いきなりお金を出したら、彼女が金に目が眩んだのだと人に言われかねません。でも僕は今日、彼女の人柄をしかと見届けました。やっぱり彼女は僕の愛すべき人だったのです」
 藩又安はすぐに棺桶を買ってこさせると、出し抜けに自分も短刀で自害し、彼女の愛に殉じたのだった。

・その頃、賈政は客人の詹子亮と共に碁を打っていた。そこへまたしても来客が。誰かと思えば馮紫英。彼は宮中の献上品として海外の珍品を持ってきており、是非買い取ってくれと賈政に頼む。が、何分高すぎるということで、史太君らは断るのだった。
その後、話は賈雨村の昇進や、甄家の没落に及ぶ。酒を飲み交わした後で、馮紫英を送り出したのだった。

次回を待て

小言
またしても懐かしい顔ぶれの出揃う九十二回。特に、司棋と藩又安の儚い恋愛エピソードは泣ける。またここ数回に渡って、宝玉達が年頃に成長したことが度々強調されている。巧姐へ「烈女伝」の講釈をしてやる宝玉の場面などは、まさにそんな感じ。結婚カウントが近づいているので、登場人物達の行動にも色々異変が溢れている。それにしても、日頃女の子とあれだけ一緒に過ごし、結婚に対してピーピー文句も言っている割に、肝心の自分の婚礼について気がつかない宝玉…。まあお坊ちゃんということだろう。

おまけ 馮紫英の献上品
広西省にいる馮紫英の知人が皇帝に献上するため持参した海外の品物。内約は以下。
「漢宮春暁」…高価な硝子石のはめてある24枚の屏風。石には山水や花鳥が彫り込まれ、屏風には入念に描かれた宮女のイラストつき! お屋敷の表部屋に飾るにうってつけ!
「海外ものの置時計」…高さ三尺。時刻が来ると、内側の人形が音楽を奏でるギミックつき。屏風とセットで価格は銀五千両。この時計と屏風はデカイので、馮紫英は実物を持ってきておらず、口頭で紹介したのみ。
「母珠」…竜眼くらいの大きさをした、ピカピカした珠。同じ形状の小さい珠があり、母珠に近づけると全てくっつくマグネ機能つき(だから何って感じだけど…)。豪華な錦の箱入り。お値段銀一万両。
「鮫綃帳」…鮫糸で織った藍色の蚊帳。かなりでかいのだが、ミニマムサイズに畳むことができる。が、賈政には全部広げて見せないうちに突っ返される。所詮その程度の代物ということか。お値段銀五千両。
以上四品、合計二万両。あのー、時計と屏風が合わせて五千両って安すぎませんか? 紫英さん。

気になる人物達
賈宝玉…塾に通っているせいで、近頃は姉妹達と疎遠に。消寒会での描写は詳しく書かれていないが、きっと大はしゃぎしていたのだろう。
花襲人…麝月の口振りだと、若様の前ではいい子ぶってるみたいな感じだが、あながち外れではない。
巧姐…王煕鳳の娘。まだ幼いはずだが、読書が出来るほど勉強を積んでいる。
柳五児…宝玉のお部屋入りのお話について、会話内で登場。
司棋…自分のままならぬ将来を嘆き、自害して果てる。
藩又安…司棋の従兄。彼女の愛に応えて死ぬ。前八十回だと司棋を残して逃げ去るダメ男のような感じに描かれてた気がするが…。
王熙鳳…字が読めないとか言われているけれど、前八十回では手紙を読んでいる。まあ当時としては、別に良家のお嬢さんだからといって字を読めなくても問題ではない。むしろ、詩作までしちゃう黛玉達の方が凄すぎるのだ。
薛宝釵と邢岫烟…自分の婚礼に関わる人物が宴席にいるので、そちらには出席せず。
賈政…久しぶりに家でくつろぐ。客人相手に談笑していた。囲碁相手の詹子亮は物語のあちこちでちょくちょく顔を出していたりする。
馮紫英…賈家の知人。ビミョーな高級品を持ち込んで売りさばこうとしたが、失敗。
賈雨村…地味に昇進している。賈政はすっかり彼に入れ込んでいるようだが…。
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