2015_10
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(Fri)00:52

紅楼夢 第九十五回

第九十五回 玉去り人去り家運去る


・茗烟は通霊宝玉が見つかったという知らせを持ってくるが、デマだった。

・邢岫烟は妙玉に降霊術を依頼。仙人の乗り移った妙玉は、筆でスラスラと仙人の言葉をしたためる。その内容は「心配ない。いつか出てくる」。李紈達はしばらく様子を見るほかないと結論。ただ一人襲人は懸命に宝玉を探し回り、夜になってもまるで寝付けないのだった。

・通霊宝玉が無くなって屋敷中の人間が騒ぐ中、ただ一人ほくそ笑んでいたのがほかならぬ林黛玉。
「きっと、仙人様が金玉縁(宝玉の通霊宝玉と宝釵の金の首飾りの縁)をぶち壊しにしてくれたんだわ。私と宝玉さんが結ばれるために!」(性格歪み過ぎだろ…)
その一方で、海棠の咲き誇った件といい、宝物の紛失といい、もしかすると不吉なことの予兆かもしれないと、不安な気持ちになったりするのだった。

・そんなある日、王夫人のもとへ賈璉が知らせを届けてくる。何と王夫人の弟の王子騰が大臣に出世したというのだ。久方ぶりの吉報の喜ぶ一同。

・そしてまたある日、王夫人のもとへ賈政が知らせを届けてくる。何と元春妃が重病にかかり、命旦夕に迫っているというのだ。余りのことに泣き出す一同。

・すぐさま元春妃のもとへ参内する史太君達だったが、元春はぐったりして言葉を発することも出来ない有り様だった。病状は悪化の一途をたどり、ついに元春は亡くなってしまう。その後、壮大な葬式が開かれた。

・通霊宝玉を失ってから、賈宝玉に異変が起きていた。一日中気が抜けたようになって、ぼーっとしているのだ。襲人は宝玉が無くなったせいだと思い、近しい姉妹の人達に助けを求める。が、黛玉は自分と宝玉は近々結婚するに違いないと勝手に思い込んでいるために、探春は不吉な出来事が続いているために、そして宝釵も結婚を控えているために、ろくに顔を出してくれない。
どんどん廃人になっていく宝玉を見て、王煕鳳らも医者を呼んで手を尽くしてみたが効果なし。

・元春の葬式行事が一通り終わったある日、宝玉は史太君へ挨拶にうかがったが、その様子はまるででくの坊。そばにいる襲人があれこれ指図しなければ、ずっとぼんやりしてニタニタ笑っている。
それを見て訝る史太君。王夫人は仕方なく通霊宝玉紛失の件を白状する。近頃のごたごた騒ぎでその事情を知らなかった史太君は仰天し、すぐに懸賞金をかけて宝玉を探すよう命令するのだった。

・仕事から戻った賈政は、通霊宝玉に懸賞金がかけられていると知り、家の恥さらしだと憤慨するが、何分母親の命令なので文句も言えない。そんな矢先、若い男が通霊宝玉を持ってきたということで屋敷に入ってくる。が、偽物。賈璉は男を叩きのめそうとするが、史太君に止められるのだった。

次回を待て

小言
通霊宝玉紛失に続き、元春妃の死亡という不幸が賈家を襲う。元春の亡くなるタイミングや死因は、研究者によって説が分かれている。現行本では第五回での賈宝玉の夢に登場する「金陵十二釵正冊」で、元春を詠んだ詩に「虎兎相逢(虎と兎が出会う)」という文句があり、続作者はこれを「寅年の卯月」と解釈し、その日時に元春が亡くなる(ご丁寧に第八十六回でわざわざ伏線まで用意している)。が、そもそも曹雪芹の原版では「虎相逢」ではなく「虎相逢」であったらしく、解釈も皇帝(虎)と皇帝に仕える太監(兕)であり、この両者から見放されたことが元春の死因だとしている。ようは、宮廷内の闘争の犠牲者というわけで、こっちの方がしっくりくるような気もする。ちなみに兕というのは「山海経」に出てくる牛のような生き物のことで、実在しない。
元春の宮廷生活に関する描写が非常に少ないのは、紅楼夢が曹雪芹の現実体験をもとにしているため、当時の清朝政府の内情を詳しく描くことをはばかったためかと思われる。それだけによくわからない部分も多く、研究者達の探究心をくすぐるのだろう。

気になる人物達
邢岫烟…妙玉のマブダチ。降霊術を依頼する。いつの間にか頼れるキャラになってました。
妙玉…親しい邢岫烟の頼みということで、降霊術を披露。よくある白目をむいて霊を自分に取りつかせるヤツである。しかし出てきた回答は超テキトー。そんなんでいいのか。
賈元春…僅か三十一歳の短い生涯を閉じる(一部だと享年四十三歳になっ母親であるているようだが、王夫人の年齢を考えると明らかにおかしい)。妃になってその寵愛を受けたのも僅か三年。宮廷に入って以降は家族とも引き離され、孤独な環境での暮らしでさぞ辛かったはず。もっとも、作中では彼女に関する直接的な描写が殆ど無いので、読者の印象はいまいちかも。
賈宝玉…通霊宝玉を失い痴呆状態に。通霊宝玉が不思議な効力を発揮する場面は前半の二十五回ぐらいなので、全然霊的なアイテムじゃないと考えていた方も多いのでは。
襲人…おかしくなった主をつきっきりで世話する。健気。
林黛玉…周囲が通霊宝玉でうろたえる中、明らかに反応がおかしい人。これが恋の病か…。
薛宝釵…自分は結婚を控えているからと、宝玉に会うことを拒む。将来の夫が人事不省なのに礼節を優先するって、その判断もどうかと思うんだけど。
王夫人…弟が出世したかと思ったら、長女は死ぬわ息子は痴呆になるわで、喜びも帳消し。
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C.O.M.M.E.N.T

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