第百回 聡き妹、遠くの地へ


・賈政は長官と会ったが、特に何の問題も無く戻ってきた。薛蟠の件でも自分が弾劾される事態にはならず、ほっと一安心。

・しかし安心出来ないのが薛未亡人。息子が再び有罪になったと聞いて嘆き悲しむ。それを慰める宝釵。
「大体お兄様という人は日頃から悪いことばかりして、いつまでも善人になろうという心がけがありませんでした。もうこれは自業自得です。それよりも、今は家の立て直しが先決ですわ」
 そこへおしかけて来たのが鬼嫁の金桂。薛蟠が死ぬと知って例のごとく喚き散らし、柱へ頭をゴツンゴツンぶつけたりする始末。一応なだめる宝釵だが、当然聞く耳を持つはずもなく。

・そんな金桂は宝蟾と組んで再び薛蝌を籠絡しようと画策。ある日「番頭の家で飲まされちゃいましたよぉ」と酔っぱらって帰ってきた薛蝌に色仕掛けをしかける。が、そこへ運悪く香菱が現れて計画は失敗。金桂はますます彼女への恨みを募らせる。

・一方、史太君のもとに、探春の縁談について賈政から手紙が届く。縁談相手の家柄は申し分ないが、何分場所が遠い。嫁いだら数年は帰ってこれないだろう。しかし王夫人の熱心なすすめもあり、史太君は縁談を承知する。兄弟姉妹の中でもずば抜けていた探春が屋敷を去ると知り、宝釵は一人悲しむのだった。部屋に戻っても、宝玉の体調を考えてそのことは話さずじまい。

・趙氏は日頃探春と仲が悪かったので、彼女が嫁ぐと聞くや、迎春みたいに苦しめばいいと喜ぶ始末(おいおい…)。一応、娘の部屋にうかがって上辺だけのお祝い事を述べたが、探春は相手の腹がわかりきっているので徹底無視。趙氏はプンスカしながら部屋を出ていった。

・探春は気晴らしに宝玉のもとへ出かけたが、彼も相変わらず痴呆状態。胸の内を隠し、とりとめない話をして帰って行った。

・宝玉は黛玉が忘れられず、紫鵑を呼んでみたり、「黛ちゃんは死んだんじゃなくて仙女になったんだ」などという妄想で独り合点したりしていた。そんな時、探春が嫁ぐ話を宝釵達の会話から聞き取って愕然とする。
「ウオオオッ、また姉妹の誰かがいなくなるなんてェー! 元春姉さんも迎春姉さんも湘雲ちゃんも…そして今度は探ちゃんか! 私だけ置いてかれて一人ぼっちなんてやだよう!」
 さすがの宝釵もこれには黙っておれず、きつくたしなめる。
「それはつまり、姉妹の皆様が、みんなあなたの老いぼれるまで一緒にいなければダメだということですの? 誰も結婚してはならぬとおっしゃるの? そういうことなら、あなたに仕えている私や襲人は、立場がありませんわね!」
「あなたの理屈はわかってますよぉ。でもせめて、いなくなるなら僕が死んで灰になってからでもいいじゃないですかあ!」
 アホなことばかり言う宝玉を、宝釵と襲人は根気よく諭して、何とかその場をおさめた。

・探春が愛おしくてならない史太君は嫁ぎ先が遠方なのを気遣う。そこで王熙鳳へあれこれ命じて、嫁入り道具の準備をさせるのだった。

小言
賈家の三女・探春の縁談エピソード。彼女が良縁にあたることは、過去の回で度々触れられており、今回でようやく複線が回収される。周囲の人物達の心情描写が見物。探春が賈家で大きな影響力を持った人物だということがよくわかる。逆にいえば、ここで探春がいなくなったことにより、家庭内の問題がますます顔を出すようになるのだが。そういうわけで、おめでたいはずなんだけど全然おめでたい感じがしないお話だったりする。


気になる人物達
賈探春…お話の中心人物。彼女としては屋敷の中に沢山の心配事を残したまま嫁いでいくわけで、とても辛いものがあったはず。宝玉との会話場面は日頃の情愛を感じさせ、泣ける。
賈宝玉…いい加減目覚めなさい。いくらなんでも、妻と妾の立場がない。
薛宝釵…ストレスで胃に穴の空きそうな状態にも関わらず、どっしり構えている。凄い。こういう腹の据わったところが彼女の魅力。日頃は大人しいのだが、いざという時は我を通す意思の強さも。おまけに弁も立ち、夫をやり込めている。完璧だあ。
襲人…宝玉への説教は彼女のお役目だったはずだが、宝釵が来てからすっかりお株を奪われている。
薛未亡人…息子の裁判のために、実家の支店という支店を潰して借金までしていたことが判明。無能すぎだろ…。
夏金桂…そういえばいたねこんな人。相変わらずうっさいです。
薛蝌…酔っぱらったところを危うく金桂につけ込まれそうになる。そんなに何度も目をつけられるほどいい男なんだろうか。
香菱…浮気阻止はナイス!と言いたいところだが、かえって彼女の立場が危うくなっていることもあり、何だかなあ。
史太君…可愛がっていた孫が嫁ぐことを悲しむ。
王夫人…縁談をためらう史太君へやたらと進言。なんかきな臭い。王夫人としては、探春がいくら優秀でもあの憎き趙氏の子供だし、あんまり可愛くなかったのかも。この回に限らないが、実は史太君に対して結構反感持っているようにとれる描写が少なくない。
趙氏…最後までダメ母親。考え方が色々おかしい。
賈迎春…人づての知らせで、下っ端の侍女より酷い暮らしを送っていることが明らかに。しかし大人しい性格が災いして何も出来ずにいる。悲しい。
紫鵑…宝玉への怒りは依然として継続中。
雪雁…結婚の時、すり替え計画の手伝いをしたため、信用出来ないと宝釵が判断。下男と結婚させて部屋から追い出してしまった。
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