第百一回 ホーンテッド大観園


・嫁入り道具の準備を進めつつ、ふと探春のもとを訪れようと考えた王熙鳳。侍女を連れて大観園へ。途中で急に寒気がして、侍女に上着を取ってくるよう命じる。
 一人になった途端、背後から黒い影が現れる。何かと思えば野犬だった。ほっとした矢先、今度は女の影が。おぞけをふるう煕鳳。
「誰なの?」
「オ姉様、ワタクシをオ忘レデスカ? 先年、ワタクシガアレホド忠告シタニモ関ワラズ、オ姉様ハ聞イテクダサラナカッタノデスネ? ワタクシノコトモ、スッカリオ忘レナノデショウ?」
 王熙鳳は仰天した。そこにいたのは、亡くなったはずの秦可卿だったのだ。幽霊に唾を吐きかけて逃げ出す熙鳳。途中でつまづき、すっ転んだところへ、侍女の豊児と小紅がやってくるのが見えた。
「お前達、いったいいつまで人を待たせる気なのよ! さあ、もう帰りましょう」
探春の部屋へは行かず、そのまま部屋へ戻って寝てしまうのだった。

・翌日、煕鳳は朝から元気がない。「私はこれまでやりたいことをやりたい放題やってきた。でも、寿命はどうにもならないね。私が亡くなったら、あんた達も肩の荷が下りるでしょう。気楽にやっておいきね。遺される娘の面倒だけ見てくれたら、私はそれでいいわ」そばで聞いていた平児は、思わず泣き出してしまう。

・同じ日、賈璉は朝早くから出かけて、何やら酷く怒った様子で戻ってくる。何と王煕鳳の兄、王仁が公事沙汰に巻き込まれて賈家に助けを求めてきたのだ。難題を押し付けられた賈璉は、ストレスを煕鳳や平児へぶちまける。

・その後、宝玉と宝釵が王子勝の誕生祝へ出かけるというので、顔を出してみた煕鳳。支度の最中に、かつて晴雯が生きていた頃の話題が出て、煕鳳は宝玉の部屋に彼女そっくりの柳五児という侍女を入れるはずだったことを思い出す。宝玉も成人したことだし、別段問題ないだろうと、柳五児を入れることを約束。喜ぶ宝玉。そのうち、宝玉と宝釵の仲睦まじい様子を見て、煕鳳は自分達夫婦の有り様が悲しく思えてしまう。

・出かける前に、一同は史太君のもとへ挨拶。若夫婦が出立したのと入れ違いに、散花寺の大了という尼がやってきて、法事で悪霊を追っ払ったという話を始める。普段は幽霊話など信じない煕鳳だったが、先日の一件があるだけに覚えず気になってしまう。大了の誘いで、翌日散花寺にお参りに向かった。そこで引いたおみくじはなんと「大吉」。周囲が喜ぶので、煕鳳も何となくその気になる。

・宝玉は宝釵から煕鳳のおみくじの話を聞いて、めでたいことだとコメント。しかし宝釵はそう考えていないようで…。

小言
王煕鳳が久々に主役となったエピソード。元気だった煕鳳が弱弱しくなっていく様はなかなか痛ましい。終盤で彼女が引いたくじの文句には「王熙凤衣锦还乡。去国离乡二十年,于今衣锦返家园。蜂采百花成蜜后,为谁辛苦为谁甜?行人至。音信迟。讼宜和。婚再议」とある。故郷に錦を飾る、という句が冒頭にあるので、皆はめでたいことだと思ったわけ。ここで出てくる王煕鳳はもちろん彼女のことではなく、漢代の人物で男性らしい。第五十四回にも女講釈師が語る「鳳求鸞」の中で王煕鳳なる人物が出てくるが、これは五代十国が舞台の物語なので別人?のはず。どうもこのおみくじの場面は前八十回の内容と整合性がとれているように思えず、続作者の意図がわからない。ラストでおみくじの内容を懸念する宝釵についても、結局どのような解釈をしたのかは曖昧なままになっている(彼女の台詞から、おみくじの結果に不吉なものを感じているというのはわかるのだが)。

気になる人物達
王熙鳳…幽霊に出くわしたり夫に八つ当たりされたりですっかり元気を無くしている。
平児…主が不吉なことを言うので泣き出してしまう。
小紅&豊児…王煕鳳の侍女達。八つ当たりされて可哀想。
賈璉…王忘がトラブルを持ち込んできたため怒り心頭。あんただって散々嫁に迷惑かけてると思うんですが…。
賈宝玉…宝釵とフツーに会話しており、すっかりまともになったようにしか見えなかったり。以前は柳五児を入れたら晴雯の二の舞になるだろうと心配していたのに、今回柳五児が部屋入りすることには素直に喜んでいる。う~ん、このあたりも矛盾しているような。
薛宝釵…そのスーパー若奥様。存在感がどんどん増している。
秦可卿…幽霊。賈蓉の前妻。第十三回にて亡くなっている。今回王煕鳳に向けた台詞は、十三回でも煕鳳の夢枕で告げている。唐突に再登場したので、初読の方は一体誰なのかわからなかったのでは。
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