2015_12
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(Sat)22:20

紅楼夢 第百三回

第百三回 香菱のスープに毒入れたwww→結果


・賈璉は王夫人のもとへ賈政弾劾の件を報告。善後策を考えていた矢先、薛未亡人の部屋の遣いが慌ただしく入ってくる。
「大変です! 金桂奥様が亡くなられました」
「あんな女、死んだ方がマシです。そんな大袈裟に騒ぐことですか!」
 吐き捨てる王夫人だが、一応様子を見ておこうと、賈璉を薛未亡人のところへ向かわせる。

・薛未亡人はすっかり落ち着きを失っている様子だった。やってきた賈璉が事情を尋ねる。
 何でも、薛蟠が牢獄入りしてから毎日狂ったように暴れていた金桂が、ここ数ヶ月突然大人しくなったばかりか、化粧までするようになった。そしてある日、香菱と一緒に住みたいと言い出し、薛未亡人も根負けしてやむなく承知したという。香菱が虐められるかもしれないと心配していたが、どうしたわけか金桂は香菱と仲良くやっており、まるで姉妹のよう。薛未亡人も安心して、しばらく放っておいた。ところが昨日、宝蟾に作らせたスープを二人で飲んでいると、金桂が突然苦しみだして死んでしまった…。宝蟾は香菱がスープに毒を入れたのだと喚くので、薛未亡人はやむなく香菱を縛り上げて軟禁したのだという。しかし金桂の実家の人間はこのまま黙っていないはず。どうしても裁判沙汰は避けられそうにない。本当に香菱が犯人なら、夏家も相手が金持ちなのを見越して、莫大な慰謝料を要求するだろう。賈璉は対処のため、急ぎ裁判所へ出かけていった。

・そこへやってきた薛宝釵。状況を観察して、宝蟾を尋問すべきと判断。即座に香菱の軟禁を解く。しかし、夏金桂の母親がもの凄い勢いで乱入してきたため、尋問どころでは無くなってしまう。娘を返せと騒ぐ母親に加え、一緒についてきた金桂の義弟も暴れ回る。

・危うく刃傷沙汰になりかけたところへ、賈璉が使用人を連れて戻ってきた。夏家の人間を取り押さえ、ひとまず騒ぎを解決。

・裁判所に先立って、金桂の部屋を捜索する一同。金桂の死体の様子から見て、どうも砒素で殺害されたようだ。果たして、ベッドから砒素の紙包みが出てきた。一方で、金桂の小間物箱がすっからかんになっているのを発見。娘からひそかに金目の物を受け取っていた母親は、悪事がばれるのを恐れて宝蟾が金桂を殺したのだと喚き出す。ブチ切れた宝蟾は逆に金桂が香菱を殺すために砒素を買ったのだと暴露。一同に真相を打ち明けた。
「あの日、奥様から香菱にもスープを作ってくるよう言われて、あたしはむしゃくしゃしてたんです。なんであいつなんかに作ってやんなきゃいけないんだって。だから香菱さんのスープには目印をつけ、わざと塩を多めに入れたんです。運んでいこうとしたら、奥様が自分で受け取りにきて、あろうことか塩の多い方を自分の卓に置くじゃないですか。後でお叱りを受けるのが怖くて、あたしは奥様が席を外した隙にスープを取り替えました。奥様はきっと、自分でスープを運ぶ時に、香菱さんのぶんに砒素を入れたんです。私が取り替えてしまったのに気づかず、寝床で休んでいる香菱さんと一緒にスープを飲みました。それで奥様の方が毒に当たったというわけです」
 証拠がすっかり出揃ってしまい、金桂の母はどうか裁判を取りやめにして欲しいと言い出す。賈家一同は彼らに出頭を命じ、それで折れてやる。

・こちらは賈雨村、最近都の長官に出世し、任を得て地方へ出張していた。渡し場で船を待っていると、古廟の中に一人のおんぼろ道士が座禅中。どこかで会ったような顔だな、と思いながら声をかけるが、まるで相手にされない。が、雨村はかつて自分の生活を助けてくれた甄士隠だと気がつく。何とかお礼をしたいと思ったが、金銭では心を動かす様子が無い。その時、部下が出立を促したので、やむなくその場を立ち去る。道士は「いずれまた会うことになりましょう」と彼に告げるのだった。

小言
夏金桂殺害事件の回。偶然が重なったとはいえ、自業自得の結末になった。砒素による毒殺は中国古典小説のセオリーで「竇娥冤」や「金瓶梅」など様々な作品に登場する。死体にはっきり中毒症状が現れるので、薛未亡人らも毒殺だと感づいたわけ。ちなみに、現代では砒素がメジャーに成り過ぎてしまったため毒殺には殆ど使われない。
現行本では生き延びた香菱だが、曹雪芹の原版では夏金桂に虐待死される最後だったという説がある。解釈としては、第五回に出てきた詞では「自从两地生孤木,致使香魂返故乡」とあり、两地(土が二つ)生孤木(木が一本)とは「桂」の字を意味しているからだとか。実際、物語におけるポジションから考えて、今回で夏金桂が亡くなる必然性は無く、展開の唐突さからいっても前八十回と整合性がとれていない。とはいえ、続作者も何の考えなしにこういう話に持って行ったのかというと、案外そうでも無さそうだったりする。詳しくは、香菱の最期が描かれる後の回に語りましょう。

夏金桂殺害事件現場の人々
薛宝釵…殺人事件を冷静に推理して対処。何かもう、どんどん凄い人になっているなあ。
薛未亡人…まさに無能。まあお金持ちの奥様なんてこんなもんなんだろうけど。
賈璉…薛未亡人たちを助けにやってきた場面はちょっとカッコよかった。何だかんだ殿方は強いんである。
夏金桂…今回でご退場。砒素にあたったためその死骸も凄まじい有り様に。
宝蟾…今回の最重要人物。保身のためとはいえ、最終的には真実を語った。金桂の母親にも公然と反逆したのは、自分が薛家の人間だという自覚があるからだろう。正確にいえば妾の身分であるわけだし。
香菱…今回の一番の被害者。もう可哀そう過ぎる。
金桂の母親…あの娘にしてこの母アリ。
金桂の従弟…金桂の頼みで砒素を渡した張本人。
王夫人…金桂の死を一言で片づける。気持ちは分からなくもない。
賈雨村…なんと都の長官に昇格していた。たぶん裏で色々やっていたんだろう。
甄士隠…賈雨村の旧友。かなり久々の登場。すっかり悟ってしまわれたようで。
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