第百四回 あっちも賈さん、こっちも賈さん


・賈雨村が河を渡りかけた時、道士のいた古廟が燃えているとの知らせ。そりゃ大変だと思いつつも、自分で駆けつけることはせず部下任せにして、さっさと河を渡ってしまう。

・任を終えて都に戻ってきた雨村は、道で通せんぼをしていた倪二という男を打ちのめし、牢屋へ入れてしまう。倪二の妻と娘はその話を聞いて、賈家の親戚・賈芸に助けを求める。以前、銀を倪二に恵んで貰った(第二十四回にて)賈芸は二つ返事で引き受けるが、何せ賈芸は一族の中でも地位が低いので門番も相手をしてくれない。そうこうしているうちに倪二は別のつてを頼って釈放。自分を助けてくれなかった賈家を逆恨みするように。

・賈雨村は、甄士隠が焼死したかもしれないということで妻(もとは甄家の侍女)を慰めていた。遣いの報告によれば、焼け落ちた廟から死体は出てこなかったという。その後、宮中からの呼び出しで参内すると、地方から免職され天子に下問されていた賈政の姿が。どうも今回の弾劾は、親戚でないが賈という姓の官僚が事件を起こしたために巻き込まれたのだとか。賈政は今回のことがきっかけで、自分達一家の者が間違いをしでかしはしないかと不安になる。

・久々に帰宅した賈政は家族と再会。史太君に探春のことを聞かれ、嫁ぎ先でうまくやっていることを伝える。宝玉夫妻は何事も無いようだし、賈蘭が立派になっているのを見て思わず喜ぶ賈政。しかし、王夫人から黛玉や王子騰の死を知らされ、悲しみに暮れるのだった。

・宝玉は広間で黛玉のことを耳にして、すっかり元気を無くしてしまう。その晩、襲人に紫鵑を呼ぶようねだるが、襲人はなかなか承知しない。じれる宝玉。
「僕は黛ちゃんがどんな風に亡くなったのかも知らないままなんだ。それなのに彼女や紫鵑から恨まれたままだなんて。それに晴雯が死んだ時は祭文まで作ったのに、黛ちゃんにはまだ何もやってあげてない。これじゃあ黛ちゃんにますます憎まれちゃうよ」
「祭文くらい、なさりたければなさればいいじゃありませんか」
「それが以前のように頭が働かないんだよ。だからこそ紫鵑から黛ちゃんが死んだときのことを詳しく聞く必要があるんだ。とにかく急いでくれよ」
長々話していたところで、麝月がやってきて一言。
「宝釵様が、早くお休みくださいと仰せですよ」
 促されて、その場を離れる襲人。麝月はにやにやしながら彼女に言う。
「うふふ、何をお話してましたの。いっそ、若奥様に今晩は宝玉様と休みますって申し上げたらいかが? 別に問題ないでしょう?」
「まったく、何言ってるのよ! 明日、その口を引き裂いてやるんだから」

・翌日、賈政の帰省を祝って宴席が開かれることになったが…。

小言
賈政を中心に、賈家の危うい立場が語られる。前八十回では、物語の舞台は殆ど賈家の屋敷内で終始していたが、九十九回以降は賈家の外部での政治的なエピソードが増えている。恐らく賈家の危機を読者によりわかりやすく伝えるためなのだろうが、その割には展開が雑だったり説明不足な場面も多い。例えば、賈政が地方へ赴任してから罷免されるまで一年も経っていない。これは作者の原案通りなのか、それとも続作者が余り意識していないでこうなったのか。いずれにせよ、急展開過ぎる。
そのほか、倪二が唐突に再登場。賈家が周囲にどんどん敵を作り始めていることを強調するために、彼のエピソードを入れたのだろう。何気に尤二姐の許嫁だった張華なんていう懐かしいキャラにも触れている。こんな感じで、後四十回は丁寧な部分とそうでない部分の落差が激しい。

気になる人物達
賈雨村…恩人が火の中にいると聞いてもスルーしてしまった。でも仕事はちゃんとやっている。悪い人なんだけど、悪くなり切れていない人物。
嬌杏…雨村の妻。何気にかなり恵まれた人生を送っている人。夫の不義をなじるあたり、人間も出来ている。
倪二…街のゴロツキ。あだ名を酔金剛。が、棒を数発食らっただけで根をあげてしまうひ弱ぶり。牢獄に入れられて賈家に恨み骨髄。どんだけ小市民思考なんだ。
賈芸…八十七回以来の再登場。どんどんダメな小者になっている。賈家に倪二の釈放を取り次いでもらおうとするが、まるで相手にしてもらえなかった。小紅あたりに頼めなかったのかな?
賈政…今回の主役。弾劾されて再び都勤めに。
史太君…息子と探春のことを心配していた。本当に可愛い孫だったんだろうなあ。
賈宝玉…段々正常に戻ってきているようだが、以前の利発さは失われたまま。九十八回で紫鵑と話した時、黛玉の臨終については多少なりとも聞いていたはずだが、本人はまだ納得がいっていなかった模様。あと、宝釵を苦手にしているようだ。
賈蘭…年齢を重ねて少しずつ立派になってきた。将来有望。
賈環…こちらは相変わらずのダメンズ。賈政もガッカリ。
襲人…主と長談義する場面は、以前の二人を思い起こさせてくれてなかなか楽しい。でも昔の二人の関係とまるっきり同じではないんだなと思うと、何だか泣ける。
麝月…お妾の立場にいる襲人をからかう。意外とお茶目なところもあるんだね。




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