第百十回 齢尽きて



・史太君は集まった家族へそれぞれ声をかけていく。
「宝玉や、お前はもう少し頑張らなくちゃいけないよ…蘭ちゃんや、お前は一人前になってお母さんを幸せにしておあげ。鳳ちゃん、あんたは聡明すぎるからね、これからはちょっと福を積むようにするんだよ…」
 語り終えて目を閉じた史太君は、やがて笑顔を浮かべたかと思うとそのままこと切れたのだった。

・泣き崩れる家族たち。賈政を喪主として葬式の準備が進められる。家の内部の切り盛りは王煕鳳が勤めることになったが、使用人が激減しており、銀子は上の夫人達が握っているため、以前のようにうまく采配を進めることが出来ない。しかし周囲の者はそうした状況を理解せず、ただ煕鳳がサボっていると思い込むのだった。かつての威光もどこへやら、使用人に泣いて頼み込む煕鳳。
「ねえ、皆さん。お願いですから明日の葬式だけは我慢して働いてくださいな。どうか私を助けると思って…」

・李紈は煕鳳の苦労を知り、ちゃんと彼女を助けてやるよう自分の使用人に言い聞かせる。一同は皆了解し、またこのような時期にも勉強に励んでいる賈蘭を褒めちぎる。

・史湘雲は夫の病気がやや落ち着いたので、急ぎ賈家へ駆けつけた。翌日の通夜、賈家の一同は揃って涙を流す。煕鳳は忙しく働いていたが、不意にやってきた侍女見習いの一言が原因で、激しく吐血してしまうのだった。

小言
史太君死す、から始まる衝撃の回。が、実質的な主役はその葬式を取り仕切ることになった王煕鳳の方。経済的に落ちぶれ、葬式一つ満足に出来ない賈家の状況が描かれる。第十三回で秦可卿のために盛大な葬式を開いた頃に比べると、その差は一目瞭然。ちなみに史太君と近しい親戚の女性達は哭声の義務がある。哭声というのは古来からある葬式の風習で、亡き人を送るため盛大に泣く一種のパフォーマンス。日本でも昔はこうした風習があったらしい。中国の場合は身内以外にも外から人を雇って泣かせることがある。また泣き方にもそれぞれ細かい決まりがあったりする。

気になる人物達
史太君…享年八十三歳。没落した家と家族を残して去るのはさぞ辛かったことだろう。彼女がいなくなったことにより、一部の人々に新たな災いの種が降りかかることに。
王煕鳳…金も人手も無い状況に追い込まれ、仕事がまるでうまく運ばない。可哀想過ぎる。
平児…煕鳳を陰ながらに支える我らがスーパー侍女。
賈璉…一応仕事をしているが、状況が状況だけに力不足。
王夫人・邢夫人…今回の元凶。ケチな邢夫人が銀子を管理していたため、仕事に必要な銀が煕鳳のもとへまわってこなかった。
鴛鴦…尽くしていた主の死に、盛大な葬式をしてくれるよう煕鳳にお願いするが、彼女の働きぶりが杜撰なのですっかり非難気味に。
李紈…煕鳳の立場を理解していた数少ない一人。黛玉の臨終に駆け付けた時といい、現行本ではかなり立派な人になっている。
賈蘭…李紈の息子。将来有望。
賈環…史太君から声をかけてもらえず、李紈の使用人からもゴミ扱い。
賈宝玉…葬式中にも思い出すのは黛玉のこと。いい加減にしろよぉ。
史湘雲…何とか葬式に駆けつけた。湘雲にとってはもっとも近しい存在だっただけに、史太君の死はショックだったことだろう。
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