2016_01
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(Sun)18:57

紅楼夢 第百十一回

第百十一回 もといた場所へ


・人事不省に陥ってしまった王熙鳳だが、周囲の視線は冷たい。邢夫人や何人かの使用人は彼女が仮病をつかっているのだと思いこむ。

・史太君の葬儀で泣きに泣いた鴛鴦。主のいなくなった今、上の人間の意向一つで自分の運命は決まってしまう。もしまた妾にでもされたら……とても耐えられない。鴛鴦は死ぬ覚悟を決めるのだった。
 どう自害すべきか考えていると、ふと部屋の奥で首を吊ろうとしている影が。誰かと思えば、以前亡くなった秦可卿ではないか。しかし彼女はすぐ姿を消してしまう。鴛鴦は秦可卿の幽霊が死に方を教えてくれたのだと合点し、帯で首を吊って果てるのだった。

・気がつくと、鴛鴦は見知らぬ場所にいた。目の前には秦可卿が立っている。
「まあ、奥様」
「私はあなたの賈家の奥様ではありません。警幻仙姑の妹にあたる可卿でございます。私は下界で痴情に悩む女性を導く役割があったのですが、この度上天へ帰らなければならなくなったので、あなたにその役目を継がせるべく、迎えにきたのです」
 鴛鴦はその説明を受けて、そのまま可卿についていくのだった。

・鴛鴦の死を、同僚の琥珀が発見し、家中が大騒ぎになった。主を追って死んだ鴛鴦について、家人は心中別々の思いを抱く。
賈宝玉「ああ、鴛鴦の死に様に比べたら、僕なんてただの汚物だ! ファッキン!」
賈政「なんと健気な娘だ! 母上が目にかけただけのことはある」
紫鵑「私も黛玉様のお供をして死ぬべきだったんだわ…。そうすれば忠義も恩も果たせたでしょうに」
鴛鴦の兄嫁「なんて立派な子なんでしょう(あの子が死んだおかげで、葬儀代とかあの子がご隠居様から貰った品物が手に入ってラッキー!)」

・後日、賈家の一同は棺を送るため出かけていく。留守番は王熙鳳と賈惜春。しかし熙鳳は病気だし、惜春はまだ子供。屋敷が手薄なのを見計らって、周瑞の養子・何三らは賈家へ強盗に入ろうと計画。

・こちら屋敷では、心細い惜春のもとへ妙玉が訪ねてくる。二人は碁をしながら時間を潰した。深夜になってようやく引き取ろうとした妙玉だが、外で突然賊がやってきたとの声。恐怖の余り動けなくなってしまう。

・新米の使用人・包勇は賊の知らせを聞くと、果敢に挑んでいきこれを撃退した。が、賊は史太君の部屋から既に金品を盗んでおり、中はすっからかんの有様。使用人頭の林之孝は番をしていた老女達を叱りつける。一方では惜春がショックで昏倒するなど大騒ぎ。盗難の鮮やかさから、もしかすると犯人は屋敷の人間なのではないかと疑う使用人達。果たして、包勇が殺した賊の一人は、周瑞の養子・何三にそっくりだった。やがて、王熙鳳も病気をおしてやってくる。彼女は番をしていた老女達を役所へ突き出すように命じるのだった。

次回を待て

小言
史太君の死により、周辺の人物達の物語が進む。前半の主役は鴛鴦。過去の回では妾にされそうになったが、その時は史太君のおかげで助かった。今は赦がいないとはいえ、仕える主を失って不安定な身分であることに変わりない。王夫人に追い出されて死を選んだ金釧児と同様のパターンだろう。主というのは、侍女達の衣食住全てを握っている生命線なので、その存在がいなくなるということはつまり生きていけなくなるも同然。他の人に仕えればいいじゃん、とかいう意見があるかもしれないが、侍女側に奉公先の選択権は無いから、一歩間違えば超絶ブラックな環境へ追いやられることもある。
後半は手薄になった家を狙っての強盗騒ぎ。かつて宝玉が勉強をさぼる口実で「そーだ! 強盗が入ったことにしよー」なんて冗談をやったが、それがマジになってしまった形である。

気になる人物達
鴛鴦…侍女たる身分の悲劇。侍女組の中でも結構頑固で我の強い性格だったので、可愛がってくれた史太君を除く主とは、しっくりいっていなかったのでは。お妾騒動の時は賈赦に逆らっているから、栄国邸の連中からの覚えは良くなかったはず。特に王夫人の意向に逆らった侍女は軒並み憂き目にあっているから、鴛鴦が我を通すような真似をすればきっと疎まれたに違いない。今回で太虚幻境に帰り、後にもちょくちょく登場する。
秦可卿…またまた登場の幽霊夫人。鴛鴦に自殺を促す?メッセージを届ける。凄い役回りだな。地味に自分が首吊り自殺したことも言及しており、曹雪芹の原案や第五回の金陵十二釵曲と内容の整合性をとっている。
賈宝玉…最近泣いてばかりですねアンタ。男らしさゼロ。
薛宝釵…死んだ鴛鴦に対して、夫と共に拝礼する。鴛鴦の姿に自分自身の境遇をを重ねていたのだろうか。
平児・襲人・紫鵑…鴛鴦の同僚達。幼い頃から育った仲間の死を悲しむ。紫鵑は黛玉の死後、宝玉の部屋にいるのだが、働いているような描写が殆どない。生活レベルもがた落ちし、生きていても死人同然の状態なのでは。襲人や平児のように妾でもない以上、鴛鴦が死ななければ紫鵑のようになっていた可能性が高い。
鴛鴦の兄嫁…義妹の死によってお金が転がり込んだのを密かに喜ぶクズ。が、周囲にはその内心を見透かされていた。ちなみに、鴛鴦が赦の妾になっていればもっと大金が手に入っていた模様。
王熙鳳…苦労続き。誰か彼女を助けてあげて…。
賈惜春…留守番を任されたが、かなりテンパっている。強盗騒ぎで卒倒してしまった。
妙玉…惜春と碁をうって圧倒する。その美しさから、賊の一団に目をつけられるが…。容姿でいうと惜春<妙玉なのだろうか? それとも賊が尼さん好きだったとか?
包勇…なんと賊を撃退。紅楼夢でも珍しい出来る男。
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