2016.02.20 紅楼夢 続作
「紅楼夢」続作について


四大名著を始めとする有名なタイトルの古典小説は、昔からリメイクや続作が多数作られている。もともと中国は印刷技術が早くから確立されており、出版事業も盛んだった。そのため、作家の中には有名な古典小説のタイトルにあやかって続作を作る者もいたわけである。紅楼夢も当時爆発的な人気があっただけに「後紅楼夢」「続紅楼夢」「紅楼復夢」「紅楼幻夢」「紅楼夢影」「紅楼重夢」「紅楼夢补」「紅楼真夢」などなど、様々な続作が書かれている。
その多くは作者の原案と異なり、ハッピーエンドで締めくくられている。そもそも当時の小説や演劇では、バッドエンドが忌避されやすい傾向にあった。本編で不幸に見舞われた登場人物を救ってあげたい、という思いもあっただろう。しかし続作者の拙さゆえか、ハッピーエンドに持って行く展開が強引だったり、話の発想が斜め上過ぎたり、出来の悪い作品も少なくない。
ここでは色んな続作の中から、一部をご紹介。

・後紅楼夢…逍遙子作。前三十回。物語は九十回直後から。紅楼夢の続作でも比較的早い段階に書かれた作品。内容としては僧と道士の力で黛玉と晴雯が生き返り、紫鵑や鶯児含めたヒロインが全員宝玉の妻妾になるといったもの。この時点でハァ?となりそうだが、本当にこういう陳腐な内容なんだから仕方ない。当時の才子佳人ものでは死んだ人間が生き返るという展開も少なくなかったため、トレンドを考えればそこまで変でもない…のか? 賈宝玉も一念発起して試験に臨み、見事合格して大出世。そのほか林黛玉の従兄で林良玉なんて人物が出てきて、家の再興に手を貸したりする。そのうえ生き返った黛玉もびしばし家政をとり、賈家の建て直しに貢献(もはや別人じゃん)。無理やりハッピーエンドへ持って行こうとする姿勢が凄まじい。ちなみにラストでは曹雪芹が登場したりする。やりたい放題の無茶苦茶な作品。

紅楼夢补…帰锄子作。別題として「紅楼夢姉妹篇」とも。全四十八回。物語は第九十七回で黛玉が死ぬところからスタート。太虚幻境をさまよった黛玉は自分の運命を知り復活、揚州へと帰る。薛宝釵と結婚した賈宝玉はその後しっくりいかず、やがて黛玉を追って揚州に。ここに至って家族は黛玉を宝玉と結婚させることに。その後、薛宝釵は病にかかり、第九十七回の黛玉を髣髴とさせるような感じで亡くなる(金釵を火鉢へ投げ入れたり、臨終に「宝玉、你好」などと言わせたり…)。かと思ったら、その後復活。そしてやはり紫鵑や鶯児が宝玉の妾になる。

紅楼夢影…西湖散人作。全二十四回。他の続作と同様、宝玉が還俗して出世する内容。しかし黛玉が生き返らないのが特徴(途中で彼女の魂と出会う場面はある)。その代わり、他の続作でやたら酷い目に遭う薛宝釵や襲人がヒロインとして活躍。そしてやっぱり麝月や鶯児が宝玉の妾になる。宝玉が現実を見つめて勉強に励む展開も、悪く言えば通俗小説のテンプレパターンに陥っているわけで、評価はしにくい。宝玉は蘭ともどもあっさり科挙に合格するし、賈家もあっさり復興していく。話の筋が予定調和のハッピーエンドみたいで、面白みがない。

紅楼復夢…作者は陳小海。全百回。第百二十回の直後から物語が始まるが、主要キャラは本編で退場した人物の生まれ変わりになっている(賈宝玉は祝夢玉、林黛玉は松彩芝などなど)。生まれ変わったヒロイン達は新金陵十二釵と呼ばれ、やっぱり揃って宝玉の妻妾になる。そのほか、襲人や賈璉が半ば仙人みたいな人物になっていたり、荒唐無稽な設定が多い。誰得なんだよ。

新石頭記…作者は吴趼人。四大譴責小説の一つ「二十年目賭之怪現状」などで有名な人。全四十回。舞台は清末になっており、はっきり言って前八十回との関連性は薄い。賈宝玉が日本へ留学し、そこで林黛玉と再会、天皇の助けを得て結婚し外国を旅するなんてエピソードがある。もはや意味不明だが、本当にこういう内容なんだから仕方ない。

その他、紅楼夢の亜流作品としては「侍女英雄伝」「天雨花」などが当時から存在している。前者は紅楼夢と真逆のコンセプトが特徴で、後者は紅楼夢と並び「南花北夢」と呼ばれるほどの知名度があった。
現代になってからも、紅楼夢の研究者によって曹雪芹の原案を再現したリメイク版が数多く書かれている。こちらは上で挙げた続作と異なり、本格的な考証を経て書かれているため、完成度も非常に高い。もっとも、中国には相当な数の紅楼夢研究者がおり、その意見もそれぞれ異なるため、どの続作が正当かを判断するのは難しい。他にも、金陵十二釵でも出番の少ないキャラや、侍女にスポットをあてたスピンオフなどが存在している。興味があれば、是非色々調べてみてほしい。

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