第十四回 禁酒は明日から! 今日は飲む!

・敵の襲撃を受けながらも、何とか洛陽へ到着した帝一行。しかし城壁はおんぼろで地面も野草が生え放題、とても住めるような場所ではなかった。おまけにその年は大飢饉で満足な食べ物もない。こんな状況では李傕達が来た途端やられてしまうので、山東にいる曹操へ助力を求めることに。

・知らせを受けた曹操はかつて晋の文公が周王を助けて天下の人々から尊敬された故事に倣い、帝を補佐するべく洛陽へ出発。

・軍を率いて洛陽にたどり着いた曹操は、ちょうど侵攻してきた李傕・郭汜の軍と鉢合わせ。曹操勢力の大きさに賈詡は降伏すべきと進言するが、ブチ切れた李傕に殺されそうになり、一人彼らのもとを去った。

・そして激突した両軍だったが、曹操配下の強者に圧倒され李傕&郭汜は惨敗。逃げ延びて山賊となった。大功を立てた曹操は帝に迎えられ、大権を握る。

・後日、曹操は臣下と協議して荒れ果てた洛陽を去り、許都に遷都を決意。しかし、これを快く思わない楊奉と韓暹は曹操に戦いを挑む。しかし有力な部下だった徐晃が寝返ったうえ、待ち伏せによる奇襲を受けてしまい敗北。袁術のもとへ逃げていった。

・遷都も終え、朝廷の人事も整えた曹操は、かねてからぶっ潰そうとお思っていた徐州の劉備に目を向ける。劉備のもとには武勇優れた呂布がおり、二人が手を組めば苦戦は免れない。荀彧は「劉備を徐州の主と認める代わりに呂布を殺す密命を下す」ことを提案。さすれば二人は仲違い、同士討ちすれば戦力も激減する。イエス一石二鳥!

・こちら徐州の劉備。曹操から勅命を受けたが、相手の考えはお見通し。呂布はそのうちヤッておきます、とテキトーな返書を出してごまかしにかかる。第一の計略が失敗した荀彧は、劉備に袁術討伐の命令を出して徐州を手薄にさせてはどうかと、曹操に進言。劉備が徐州を離れれば、野心家の呂布はその隙に徐州を我が物にしようとするはずだ。曹操もこれに賛成した。

・後日、袁術討伐の勅命を受けた劉備は、反対することも出来ず、やむなく出陣を決意。自分の代理として誰かを残しておきたいが、そこで名乗りをあげたのは張飛。しかし劉備は渋い顔。
「お前は酒癖も悪いし行動が軽率だ。とても勤まるまい」
「任せてよアニキ。酒も飲まず、兵士達にも乱暴しなけりゃいいんだろ。俺はアニキに仕えてからこれまで一度も約束を破ったりしてないじゃないか」
他に任せられそうな人物もいないので、劉備は陳登らに張飛のお目付を頼んで徐州を任せた。

・劉備が兵を率いて出かけると、張飛は宴席を設けてこんなことを言い出す。
「アニキは俺に酒を慎んで、よく徐州を守るよう言いつけた。そういうことだから、今日は心行くまで飲み、明日から禁酒して勤めに励もう!」←は?
 
それからは、宴席の一同に自分から酌をしてまわり、自分も杯で酒をがぶ飲み。臣下の曹豹は酒に弱かったので二度目の酌を断ろうとしたが、酔いのまわった張飛はそれに激怒。「俺の酒が飲めねえのかぁ! あぁん?」とパワハラまがいの脅迫を行う。曹豹が「婿に免じて許してくれ」と請うが、その婿というのが何と呂布。彼を心底嫌っている張飛はブチ切れて、曹豹を鞭で叩きのめす。

・曹豹は恨み骨髄、ひそかに呂布へ書状を送り、劉備もおらず手薄な徐州を奪ってはどうかと伝える。呂布は陳宮と相談した結果、兵を率いて徐州を奇襲した。張飛は慌てて出陣したが、味方も殆どおらず、あっさり徐州を奪われてしまうのだった。

・一方の劉備は、袁術軍と何日も対峙。襲い掛かる敵をうまく撃退していた。そこへ僅かな部下と共に張飛がやってきて、徐州が奪われたことを告げる。劉備の家族が徐州に取り残されたままだと聞いて、激怒する関羽。
「お前は兄上が出立する時、自分で何と誓いを立てた。よくおめおめと顔を出せたものだな!」
 恥じ入った張飛は、不意に剣を手に取って自害しようとする。
 果たして!

小言
曹操が朝廷で大権を掌握する前半、そして徐州が呂布に略奪される後半、二つのエピソードが語られる。
今回のハイライトは酒を飲んで失敗する張飛の一幕だろう。子供の頃に三国志演義を読んだ時、張飛は何て役立たずなヤツかと思っていた。しかし、実のところ彼がいなければ三国志演義の作劇は成り立たない。読み進めていればわかるが、劉備・関羽・張飛の三人のうち、前者二人は完全に別格扱いされている。劉備は言うまでもなく主人公であり、作中のヒーローポジション。善人の面が強調され、別に何もしなくても他の人物から絶賛される。そして関羽だが、こちらはご存じ武の神様。神様だから、間違っても貶めるような描写は書かれない。原文ではもっぱら「関公」の尊称で呼ばれ、文武両道、活躍も華々しいものばかり。
このように劉備・関羽は基本的に完全無欠、いわば公式のメアリー・スーみたいな人物なのだ。彼らに作劇上ヘマをさせることは出来ない。だからこそ、張飛が物語をかき回すことでうまくバランスをとっているのだ。彼は何度も失敗を繰り返すが、それによって話が盛り上がるようになっている。また度々劉・関二人に諫められることで、彼らの株をあげる役割も担っている。
じゃあ失敗ばっかりしてる張飛が読者に嫌われるかというと、決してそんなことは無い。例えば、第二回の例を見てみよう。県令になった劉備のもとへ、朝廷の使者が難癖をつけにくる。劉備はそれに対して丁重だが、張飛は使者を捕まえてボコボコにする。が、劉備は乱暴な張飛の行いを叱る、というくだり。普通に考えれば、読者は悪党を叩きのめした張飛の行動に共感するのではないだろうか。善の体現者であり、ヒーローポジションたる劉備は、張飛のように暴力的な行動が出来ないし、作者もさせられない。だから、彼に代わって張飛が動く。読者の気持ちを代弁し、兄達が出来ないことやってくれる。それが張飛なのだ。
演義ものや武侠ものの古典小説では、この張飛ポジションのキャラがいるかいないかで面白さが断然変わってくる。物語にとって決して欠かせない存在だ。

気になる英雄達
献帝…やっと戻ってきた洛陽はただの廃墟。結局、曹操の提案ですぐさま遷都してしまう。
李傕・郭汜…どんどん強さを増す曹操軍の前には、彼らが力を合わせたところでひとたまりもなかった。
楊奉・韓暹…帝についたかと思ったら曹操の勢力を恐れて寝返ったりと忙しい。
曹操…いよいよ朝廷で大権をゲット。相変わらず徐州にこだわっている。
董昭…朝廷の臣下。洛陽で曹操に目をかけられる。ベジタリアン。
荀彧…曹操軍参謀。意地の悪い計略で劉備を追い詰める。優秀。
徐晃…今回より曹操配下につく。
劉備…荀彧の二段構えの計略をしのげず、やむなく徐州を離れた。不安を抱えながらも張飛を残すしか選択肢がなかったあたり、曹操に比べて人材に乏しい。
関羽…袁術軍との戦いで活躍。こちらは張飛と違って劉備も全幅の信頼をおいている。
張飛…フラグ回収早すぎ!
呂布…もはや裏切りは彼の代名詞になってきた。陳宮の進言もあったとはいえ節操ない男だ。
袁術…荀彧の計略にあっさり引っかかったり、かませ臭くなってきた。


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