第十九回 白門楼に死す


・ついに現れた呂布。圧倒的な強さで劉備軍をぼこぼこにすると、城内を占拠。呂布が劉備の家まで到達すると、麋竺が現れた。
「劉備殿は呂布殿に救われた恩を忘れたことはありませぬ。ただ曹操には逆らえず、やむなく彼に組みしたのです。呂布殿も大丈夫ならば、劉備殿を見逃し、また家にいる家族には手を出さないでいただきたい」
「はっはっは。俺と劉備はマブダチだ。家族に手を出すものか」
麋竺の言葉を呂布はすんなり受け入れた。

・味方は散り散りとなって、劉備はただ一人逃亡。再起をはかるため曹操のもとを目指す。食べ物が無くなったため、途中の村で物乞いをすると、誰もが劉備の名を慕って我先に食料を差し出した。ある日、若者の家で狼の肉料理を振る舞われるが、それは何と若者の妻の肉だった。劉備は劉安と名乗ったその若者を連れていこうとするが、老齢の母親がいることを理由に断られ、涙ながらにその場を立ち去る。その後、曹操軍を発見してこれと合流。彼に従って呂布討伐へ向かう。曹操は許褚を先鋒として繰り出し、簫関で布陣していた呂布軍を突破する。

・こちら徐州の陳珪親子。いよいよ呂布に反旗を翻す時がきた。陳登はさっそく計略の第一手として呂布にこう提案。
「曹操は徐州を四方から攻め立ててきましょう。万一に備え、軍要金や兵糧、ご家族を別の場所へ移動させておくべきかと」
「うむ。それがいい。そうしておけ」
 あっさり陳登に従う呂布。準備を整えると、自ら軍を率いて出陣。が、陳登は呂布を言いくるめて先行し、陳宮や他の部隊へデマを流しまくり、軍を一か所に集めて同士討ちさせる。そこへ、陳登とあらかじめ内通していた曹操軍が襲い掛かる。窮地に陥った呂布は徐州へ退却するが、なんと城は陳珪によって乗っ取られていた。
ようやく騙されたことを知った呂布だが、陳登は既に小沛にいる曹操のもとへ身を隠していた。そんなところへ張飛・関羽の一隊、さらに曹操の大軍が攻めかかってくる。呂布は決死の覚悟で血路を開き、何とか逃げ延びた。

・劉備・関羽・張飛の三兄弟は再会できたことを涙ながらに喜ぶ。曹操は呂布をこのまま倒そうとしたが、程昱に諫められる。曰く「あまり追いつめては呂布が袁術と結託する可能性があります。それを阻止できるように布陣しましょう」。
そこで曹操は劉備に支援を要請。外部からの邪魔を防いで貰い、自らは呂布討伐へ乗り出す。

・こちらは呂布。下邳の城に立て籠ってすっかり安心しきっていた。兵糧はあるし周囲は泗水に囲まれているので、迂闊に敵も近寄ってこれないハズ! そこへ曹操の大軍が到着。陳宮は相手の陣容が整っていないのを見て、今こそ攻撃すべきと主張したが、呂布は聞く耳を持たない。曹操が外からしきりに降伏を呼びかけるが、陳宮はこれをはねつけた。

・徹底抗戦すべしと訴える陳宮。呂布も一応賛成したが、夫人と貂蝉に説得されて急激にやる気を無くす。それからは毎日酒と女で現実逃避。陳宮はふがいない主人を見ていよいよ最期を覚悟した。

・ある日、配下の許汜と王楷が「袁術殿に救援を求めましょう」と言ってきたので、呂布も一応その計略にのっかる。張遼・郝萌らが兵を率いて劉備の囲みを切り開き、許汜と王楷は無事袁術のもとに到着。袁術は前回縁談を突っぱねられたので支援を渋る。
袁術「呂布は口ばっかだからなァ。娘を先に寄越したら考えてやるよ」
結局成果も無く、危険な道を往復する羽目に。前回まんまと突破されてしまったためか、劉備軍の防備はかなり厳重。夜になって駆け抜けようとしたが、郝萌はあえなく張飛に捕まり、曹操のもとへひったてられる。呂布が袁術と結ぼうとしていることを知り、激怒する曹操。郝萌の首をスッパンした後で、味方を怒鳴りつける。
「てめーら呂布の配下を一匹でも逃がしたら処刑だからな。よーく覚えとけよ!」
せっかく手柄を立てたのに怒鳴られた張飛は不満顔。それを劉備は諫めるのだった。

・帰ってきた許汜達の報告を聞き、呂布は自ら娘を届けることを決意。兵士と共に劉備の陣を突破しようとするが、劉兄弟に加え、曹操側も徐晃や許褚を差し向けてきたので、さすがの呂布も退却。城にこもると、やってらんねーとばかり酒に溺れる。

・なかなか城が落ちないので、曹操は軍師達と相談のすえ水攻めを開始。川を決壊させて呂布の城を水浸しにする。城内の兵士は慌てふためいていたが、とうの呂布は知らん顔。「べつにぃ。俺の赤兎馬なら水なんか平気だし~」。毎日毎日オサケとオンナ。しかし、とある日鏡を見てみたら、自慢のビューティーフェイスがげっそりやつれている。これには呂布もショック。
「酒と女に溺れたのがいかんのだ。よーし、今日から城内で酒と女を禁止する!」
斜め上すぎる思いつきを城内に通達する呂布。折しも、八健将の一人・候成が馬泥棒を捕まえ、お祝いをしようと呂布に酒を献上してきた。当然、ぶち切れる呂布。
「貴様ァ! 酒は禁止だと言ったろうがぁ。この俺に逆らうのか!」
その場で候成を打ち首にしようとするが、他の八健将の説得で、棒打ち五十回の刑に。
呂布のあんまりな仕打ちに、その場の八健将メンバーは謀反を計画。候成が赤兎馬を盗み、曹操のもとへ走る。曹操が軍を率いて城に近づくと、魏続・宋憲が呼応して白旗を掲げたので、曹操も降伏を勧める布告を投げ入れながら進軍開始。
呂布は不意をつかれながらもなだれ込んできた曹操軍と戦い、ようやくこれを退ける。しかし疲れ切って転寝していたところ、宋憲と魏続に左右から襲われ、あえなく捕まってしまった。宋憲が呂布のトレードマークである戟を城の外へ放り捨て、白旗を立てたのを合図に、曹操軍が城内へなだれ込む。間もなく、高順・張遼・陳宮も捕らえられた。

・捕まった呂布は「縄目がきついよぉ。緩めてくれ~」と情けなく喚き散らすが、曹操には相手にされず、魏続や宋憲からも罵倒される有様。曹操は高順を打ち首にするよう命じ、陳宮と対面。
「久しぶりじゃな。その後変わりないか。何故呂布になど仕えておるのだ」
「こいつはバカだが、貴様のような奸賊ではない」
「ふふん。しかしそなたの智謀をもってしても、今日はこんなザマになっとるがのう」
「そこのバカが言うことを聞かんからだ。このうえは死あるのみ。わしの家族の生死も貴様次第だ。さあ、さっさと首を斬れ」
 陳宮は自ら頭を差し出し、刑に服した。曹操は彼に感服し、残った家族の面倒を見るよう命じた。

・で、残った呂布はこっそり劉備に耳打ち。何をするかと思えば、この期に及んで命乞い。
呂布「劉備殿、助けてくれ。たのむ」
劉備「いいよ」
その口添えで元気が出たのか、曹操が戻ってくるなり得意げにのたまう。
呂布「いやー、ハッハッハ。曹操殿は私を悩みの種にしておられたが、この通りすっかり降参したのだ。これからは私が曹操殿の副将となり、お力添えをしよう。そうすれば天下統一もあっという間ですぞ! ワハハ!」
 それを聞いて、曹操は劉備を振り向く。
曹操「そなたはどう思うかね」
劉備「丁原と董卓…」ボソッ
呂布「なっ……」
劉備の一言で、呂布が裏切りの常習犯であることを、曹操も思いだす。
曹操「そーだったな。やっぱ斬っとくか」
呂布「ちょっ……劉備いぃ! ざけんなコラァー! 俺に助けられた恩を忘れたのかァ!」
訴えも空しく、呂布の首は曹操の命令で切り落とされた。
最後に残ったのは張遼。曹操は相手の態度が尊大なので早速処刑しようとしたが、ふと横からそれを止める声が。
「丞相、しばしお待ちを」

果たして!

小言
呂布討伐回後編。作中随一のトリックスターだった呂布がここへ来てとうとう脱落。見せ場も沢山あり、まさに序盤のハイライト。
呂布という男はとにかく物事の見通しが甘い。麋竺の舌先三寸であっさり劉備の家族を見逃したり、陳珪親子の面従腹背作戦に終始踊らされたり、軍師では無く妻妾の意見を優先したり…。特に最後、あんだけ裏切ったり何だりしておきながら、命乞いなんかが通用すると思ったんだろうか。まあ、思ったんだろうな…。
さて、そんな呂布と対照的なのが我らが主人公・劉備。危機に陥ったら家族も捨ててなりふり構わず逃げるし、物乞いもする。曹操は一瞬、呂布を配下に置くことを考えたが、劉備はきっぱり跳ねつけ、曹操の手を借りて呂布を排除。必要な時に必要な行動・決断が出来るのが劉備というキャラであり、これが彼の強さでもある。

気になる英雄達
呂布…希代の猛将も、最後は部下に裏切られて敗北という惨めな自滅ぶり。さらば呂布、君のことは忘れない…。
陳宮…曹操には徹底抗戦の姿勢で臨んだが、肝心の主君がダメダメでした。潔い最期に涙。
八健将…呂布の頼れる配下たち…のハズが、主人があんまりなのであんまり活躍出来ず。戦死したり裏切ったりで完全に内部崩壊した。
高順…呂布配下。張遼とよくコンビを組んで善戦したが、今回で戦死。
厳氏・貂蝉…ぽっと出てきた呂布の妻妾。貂蝉は呂布が曹操に打って出ようとするのを制止する。董卓も義父もいなくなり、男として呂布を本当に頼り始めていたのか、はたまた彼を滅ぶ方向へ誘導するつもりでいたのか、その心情は不明。
袁術…過去の恨みを捨てて呂布と組む手もあったろうに、相変わらずの小物ぶり。こうしたミスの積み重ねが、後に本人を苦しめることとなる。
曹操…終始有利に戦いを進め、呂布を撃破。相手側の崩壊ぶりがひどかったのもあるけど。
許褚…すっかり第二の典韋ポジションに落ちついている。今回も呂布討伐で活躍。
夏候惇…前回の怪我のため今回はお休み。
陳珪・陳登…親子で鮮やかに呂布を欺き、曹操軍勝利のきっかけを作った。今回の立役者。
劉備…我らが主役。呂布の言う恩なんて無理やり押し付けられただけのものだから、劉備には有り難くも何ともないはず。実のところ戦力的には呂布を倒すだけの力も無いので、うまく曹操の手を借りてとどめを刺した感じか。くだんの人肉エピソードについては後述で。
関羽・張飛…劉備の頼れる義兄弟。要所要所で活躍。
麋竺…城内へ入ってきた呂布を弁舌巧みに丸め込む。いい仕事してる。
劉安…村の若者。劉備に人肉ディナーをふるまった張本人。三国志演義を読むうえで必ずと言っていいほど話題になるシーン。研究者やファンの間でも色んな解説がされている。カニバリズムばかりに目がいきがちだが、劉安の行動はまさに儒教でいうところの「五常」や「五倫」の究極系だろう。身内を犠牲にしてでも君に尽くし、老いた母親のためには劉備の誘いも断る孝の精神。それらが封建社会では美談になりえたのだ。もちろん、現代人でしかも日本人の我々にはとても共感出来ない内容だけど。ちなみに、何で母親は大事にするのに妻が殺せるんだと思う方もおられるだろうが、当時の女性は社会でも家も地位が低く、何かあれば真っ先に犠牲の対象となる存在だった(同じ女性でも親の場合は孝の教えがあるので大切にされる)。三従四徳を突き詰めれば、究極的にはこういう形になるというわけ。第八回の貂蝉も同じ例である。中国古典で貞女だの烈女だのと持ち上げられる女性の多くは、つまるところ封建社会下の犠牲者に過ぎない。
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