最近スランプです。リハビリもかねて、これまでに書きためておいたレビューを放出します。

今回紹介する古典「今古奇観」は全四十集の短編小説集。
本作は明末の「三言二拍」という五種類の読本にある二百編の小説のうち、特に優れたものを抱甕老人が四十集にしてまとめたもの。ちなみに三言とは馮夢竜の「喻世明言」「警世通言」「醒世恒言」を指し、二拍は凌濛初の「初刻拍案惊奇」「二刻拍案惊奇」のことを言う。今古奇観の編者である抱甕老人については謎が多い。全四十集のうち、多くが三言で占められているので、一説には馮夢竜本人か、彼と親しい人物だったとも。
「今古奇観」や「三言二拍」のお話は江戸時代に日本へ輸入され、日本人向けにアレンジされたものが読本として出回っている。あの読本のルーツが実は中国にあったり…と、色んな意味で楽しめる。

「今古奇観」におさめられている小説はいずれも当時の黄金パターンにのっとって作られた作品ばかりであり、中国古典をかじったことのある人なら難なく読み進めることが出来る。また元ネタが唐代の伝奇などから引っ張られている作品もあり、作者のアレンジを楽しむのもまた一興。一つ一つの話が短いぶん、いきなり三国志や水滸伝のような長編の原典を読むのはムリ! という方々におすすめ。

また、上で当時の黄金パターンと書きましたが、それについてもう少し詳しく説明しておきましょう。
当時の小説(説話小説とも呼ばれる)は、そもそも街角の講談が発展していったものなので、文体や語り口が講談っぽいのが特徴。作者が途中で「皆様お聞きください」「さて皆様どうなったと思われます?」云々と本編に合の手を入れたりする。
また近世以前の中国において小説というジャンルはそもそも歴史書の扱いなので、書いてあることはたとえ荒唐無稽な話でも基本的には事実ということになっている。これはあらゆる中国古典小説を読むうえで大事な認識なので、知っておくが吉。
お話のジャンルは煙粉(恋愛物)、公案(裁判物)、志怪(ホラーもの)、伝奇(人物伝)、鉄騎児(軍記物)など幅広い。

小説の話の構成は、基本的に次のパターンを踏襲している。
定場詩・入話→正話→収場詩

1、定場詩・入話
…本編に入る前に、本編の趣旨などをわかりやすく語ったもの。聞き手が話に入りやすいようにするために用いられる。話によっては定場詩しか無い、あるいはどちらも無いといった場合もある。

2、正話
…本編のこと。

3、収場詩
…物語を締める、まとめの詩詞。古典小説では、詩句で物語を結ぶのが基本となっている。これまた物語の趣旨、作者のテーマを読者にわかりやすく伝えるためのもの。

本レビューでは、「今古奇観」の中から面白そうなものをピックアップしてレビューしていきます。皆様の読書に役立てていただければ幸いです。
参考文献は中国古典文学大系「今古奇観 上下」巻です。
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://ryunohige5884.blog.fc2.com/tb.php/30-144d7e5d