2012_12
25
(Tue)13:16

今古奇観 その二

ここからは「今古奇観」で私が個人的に好きな作品を紹介。
あくまで私見ですので、鵜呑みにしないでくださいね。
選ぶ観点としては、話の奇抜さ、テーマ性の強さ、歴史面の描き方などなど。

第二話「両県令競義婚孤女」

もとは醒世恒言の一遍。邦題は「二人の県令が義を競って孤女を嫁がしむること」

ものがたり
本編は五台十国の時代、地方政権の南唐が舞台。徳化県に石という清廉潔白な県令がいたが、官米を蓄えた倉庫で火事が起きたことをきっかけに多大な賠償を唐王から要求され、それがもとで病気になり死ぬ。彼には一人娘がおり、幼名を月香といった。彼女は家ほろんだ後女中と共に公売にかけられてしまうが、そこへかつて石県令に冤罪から助けて貰った賈という商人が通りかかり、二人を買い取る。月香と女中はしばらく安寧な日々を送るが、いじわるな賈の妻によって、賈がよそへ商売へ行っているうちに再び売られてしまう。月香は鍾という県令のもとで女中として仕えることになったが、ふとしたきっかけで鍾県令に素性を知られ、近々婚礼を結ぶ予定だった高県令と数度のやり取りをして、高家の長男に鍾家の長女を、高家の次男に月香を嫁がせるということで話をつける。両県令はその義に厚い行いのおかげで、子孫も繁栄を極めた。

とまあこんな感じ。
冒頭には入話があり、本編とは真逆の内容。
舞台は五台十国時代の南唐となっており、正直な話中国史に多少通じていないとイメージがわかないかもしれません。唐の名を冠しているだけあって、この時期乱立していた地方政権の中では強大な国でした。もっとも、今回は特に歴史と物語が絡んでは来ないので無視してもオッケー。

中国通に興味深いのは、やはり序盤の公売の場面でしょう。県令の娘月香とその女中はそれぞれ、五十両、三十両で買い取られました。その当時の相場が結構気になるところ。今回は良家のお嬢様とその女中が売られているということもあり、値段が跳ね上がっているわけです。
ちなみに支払いは紋銀。ここらへんなんか史実的に怪しい気がしなくもない。乱世の時代だから、銀のような貨幣の方が使い勝手はいいとは思うのですが、本当に紋銀なんかあったんかな。
当時の読本に対する一つの批判として、歴史公証がいい加減な点がある。おおまかにいってしまえば書き手の教養不足が目立つ。これは短編のみならず長編でも言えることで、例えば金瓶梅は宋代の物語でありながら、登場人物たちの暮らしの描写や官制は明代のものだったり。小説が民間に流布した割に長いこと知識人層から評価を得られなかったのはこうした点が大きいのでは。

賈家に売られた月香と女中が賈家の女房にいびられるさまはまさに昼ドラ。このあたりは読者の共感を呼ぶ大事なとこなので割と引っ張る。賈家の女房はてっきり月香を養女にしたものとばかり思っていたのだが、夫が彼女をお客様扱い(あくまで恩人の娘)し続けるので、我慢がならなかったというわけ。
物語の終盤に出てくる二人の県令は、身よりのない月香のために縁談を結んでやったわけだが、そのおかげで後の代まで繁栄しましたYO!というのは、この時代のパターンとはいえ安易極まりない。なんというか、彼ら二人の行いと後生の繁栄にまるで因果関係が感じられず、とってつけたような感じ。もう少し技量のある作者だと、ここらへんがある程度ご都合主義から脱却している。

とはいえ、読後感のよい作品です。一番の見どころはやっぱり賈家の女房に月香と女中がいびられる場面でしょう。昼ドラ好きにはたまりませんわな。




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