2012_12
25
(Tue)13:18

今古奇観 その三

まだまだいきます。「今古奇観」のおススメ紹介。
正直、全四十編のいずれも見るべきところのある面白い作品なので、全部のレビューを書くのもまんざらではないのですが……。

第三話「滕大尹鬼断家私」

邦題は「滕大尹が幽霊によって私財をとりさばくこと」。「喩世明言」からの一遍です。

ものがたり
明の永楽年間、順天府に倪という府の長官(別名を太守とも)がいた。倪太守はまじめに蓄財を重ね、善継という跡取りもいる。夫人はとうに無くなり、倪太守自身歳はもうすぐ八十に届く。十月のある日、太守は村の川べりで見かけた十七歳の娘に年甲斐もなく惚れ込んでしまい、ついにその娘、梅氏を妻に迎える。やがて十月の後、梅氏はみごもった。息子の善継夫婦は、跡継ぎが増えてしまえば財産を分けねばならぬので、これが面白くない。倪太守は梅氏の子供を善述と名づけ、五歳のころには勉学を始めさせた。ある日倪太守はふとつまづいたのをきっかけにして病になり、そのまま亡くなってしまう。彼は亡くなる直前、梅氏に対して一枚の掛け軸を渡し、困ったときに賢明なお方へこれを見せて判断をあおぐよう言い残した。太守は欲深な善継の性根を知っていたため、争いにならぬよう土地の殆どを彼に渡し、梅氏にはわずかな土地しか残さなかった。しかし、太守が亡くなった後も善継夫婦の嫌がらせは続く。ある日、新たに赴任した滕県令の名声を聞きつけた善述は、母の梅氏に告訴するよう申し出る。梅氏は太守から生前に渡された掛け軸を持って県令に訴えた。善継はこれはまずいと思い、親戚に金を送って自分の味方につける。
滕県令は掛け軸の謎が解けなかったが、ふとしたきっかけで掛け軸に茶をこぼすと、絵に文字が浮かび上がってきた。そこには隠された遺産の相続について書かれていた。やがて裁判の日、滕県令は一芝居をうつ。倪家に来るなり、大広間でいきなり何やら話し始める。どうやら太守の幽霊と話しているらしい。そして東側の小さな家に行くと、生前に倪太守が善述のために残した大量の遺産があった。これにて善述は暮らし向きも良くなり、勉学を積んで後に繁栄する。逆に善継の方は落ちぶれてしまうのだった。


舞台は明の永楽年間。今回も物語と史実は絡んできませんが、前回紹介した話に比べると、歴史考証の面で突っかかるところは少ない感じ。
まず物語として面白いのが、八十間近のじいさんが十七の娘を娶るというくだり。
息子の善継は、若い女が老人に嫁ぐというのは世間様に対する家名の汚れだし、若い女は老人なんかとの生活に我慢できなくなって脇道に走る(浮気する)にきまってる、と考えるが、まあ確かにごもっともな意見。しかし予想に反して梅氏は真面目に暮らし、子供まで作ってしまう。じいさんの魅力と精力が凄いのか、梅氏が超貞淑なのか…。
そして本作で一番うまい汁を吸ったのが滕県令でしょう。実は太守が残した掛け軸の遺言では、善述に財産を渡す手助けをしてくれた者には銀三百両を謝礼にするよう書いてあった。しかし滕県令は実際の裁判で一芝居うち、金千両という大金を倪太守からのお礼だと称し、まんまと手に入れてしまう。その事実は、結局梅氏や善述も知らずじまいだった。このあたり、なかなか県令を単なる善人と書いていない点がリアルで面白い。




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