第十八回 一夜の再会、そして別れ


・賈政のもとから去った宝玉、そこへやってきた取り巻き達は「私達が口添えしたからこそ旦那様は上機嫌だったんですぜ。何かおめぐみをくださいよ」
と、宝玉の腰から提げ物を根こそぎ奪ってしまう。

・黛玉は自分ところへやってきた宝玉が取り巻きに飾り物をとられたと聞いて怒りだす。
いきなり奥へ行くと、宝玉のために作っていた飾り袋を鋏で切り裂き始める。
「ちょっ、黛ちゃん何するんですかあ!」
「わたくしがあげた贈り物まで、あんな下種な連中に与えてしまったんでしょ! あなたのために何か作ってあげるなんて、ばかばかしいわよ!」
「何勘違いしてるんだ! 君がくれた包みならちゃんと持ってるってば!」
 怒った宝玉が懐から小さな布包みを取り出した。まさしく自分が彼にあげたもの、人目につかぬよう深くしまいこんでいたのだ。
黛玉は自分が早とちりしたのだと知ったが、ツン百パーセントの彼女が素直に謝るはずもなく、暴走してその小包みにも鋏を入れてしまう。
「黛ちゃんだめえええ! それまで切ることないじゃないかあああ」
「うるさいわねっ! あなたが意地悪だからいけないのよ!」←どこが…
「ねえ機嫌をなおしてくださいってば。また作ってくれればいいんですよ」
「気が向いたらね」
なんだかんだで仲直り。

・賈家は元春様の帰省を迎える準備に余念がない。沢山の尼さんを呼んだり、貴妃様の前で演目をするため十二人の娘役者を仕込んだり…。呼んだ尼さんの中には若くて修行の深い妙玉という娘もいた。

・いよいよ元春様が大勢の配下を連れて賈家に到着。

・豪勢な賈家の有様を見て、元春は暗い面持ちに。「お金をかけ過ぎだわ…」

・史太君をはじめとする家族に再会した元春。しかし妃となった彼女の地位に遠慮して、家族は臣下の礼をとり、少しよそよそしい。実の父親にも御簾越しに頭を下げられる始末で、元春は悲しみを覚える。「田舎の百姓であれば、家族揃って団欒も出来ましょうに、私達はそれも叶わないのですね」

・元春は唯一同腹である兄弟、賈宝玉と再会。宮仕えする前は母子のように仲良くしていたこともあり、二人ともこの再会を喜ぶ。

・元春は新たに増設した庭園に「大観園」の名をつけ、園内の建物にも名前をつけていく。そして宝玉、黛玉、宝釵、賈家三姉妹らへ詩を作るよう命じる。

・娘達は一首だけで良かったが、宝玉だけは四首作りなさいとのこと。焦る彼に黛玉と宝釵が横からアドバイス。なんとか事なきを得た。

・その後、娘役者たちの舞台が催され、元春は家族たちとともにひと時の団欒を楽しむ。が、帰りの時間が来てしまった。元春は後ろ髪惹かれる気持ちで帰っていくのだった。

次回を待て

小言
元春の帰省という一大イベントをめぐるお話で、話の密度もかなり高い。様々な登場人物が顔を出していることもあって、初読では混乱してしまうかも。すっかりお祭り騒ぎな賈家一同に対し、一人その様子を憂う元春が印象的。

登場人物まとめ
賈元春…賈政と王夫人の長女。宝玉とは歳の離れた兄弟で、母親にも近い関係だった。その後宮仕えして皇帝の妃になり、今回は久々に帰省。が、彼女の地位は今や親兄弟をしのぐものになっており、賈母達をはじめとする人々のかしこまった挨拶には悲しみを覚えてしまう。また、自分の帰省に際して賈家が莫大な金をかけたことにも心を痛めた。
賈宝玉…賈政と王夫人の次男。冒頭では黛玉と喧嘩。しかしこんなことは今後の日常茶飯事になる。今回はお姉ちゃんにいきなり詩を四首作りなさいと命じられて焦りまくり。後述するヒロインたちのおかげで何とか面目を保った。ふう。
史太君…賈家の最高権力者。しかし元春に対しては臣下の礼をとろうとしたため、悲しまれる。
賈政…元春の父にして栄国邸の主。礼儀ガチガチの挨拶に、元春は父親と距離を感じてしまう。
賈家三姉妹…貴妃様に詩を作るよう命じられる。迎春と惜春は詩の才能が無い模様。探春は黛玉や宝釵に及ばないものの、それなりの詩を作ってみせた。
林黛玉…元春もその素晴らしさを讃えたヒロイン。冒頭では宝玉と喧嘩。あんた少し素直になりなさいよ。元春から詩作を命じられた時は「私の才能を皆様の前で見せつけてやるわ」と意気込んでいたが、一首しか作れないと聞いてがっかり。その後、苦戦している宝玉を助けるべく、彼が三首目に取り組んでいる間、四首目を代わりに作ってあげた。元春の評価では「四首目がずば抜けて優れていますね」とのこと。凄いぜ。
薛宝釵…元春もその素晴らしさを讃えたヒロインその2。彼女も苦戦する宝玉に詩作のアドバイスしたが、黛玉のようにあからさまな手助けはせず、あくまで横からヒントを教えてあげるだけ。彼女の思慮深い一面が浮き彫りになった。
妙玉…妙齢の尼さん。今回は不幸な生い立ちと偏屈な性格が明らかになるが、本人は殆ど姿を見せない。彼女もまた金陵十二釵の一人。
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