久しぶりの今古奇観レビュー。もう後半突入です。
今回紹介するのは第二十六巻「蔡小姐忍辱報仇」。邦題は「蔡小姐が恥を忍んで仇を討つ」。
醒世恒言の三十六話にあたる。

ものがたり
明の宣徳年間、武官の蔡武とその夫人は大の酒好き。ある時、目をかけてやっていた趙家の若者が科挙試験に合格、出世した恩に蔡武へ高い官職を与えてくれた。喜ぶ蔡武だが、娘の瑞虹は父が日頃飲んだくれているので赴任地の勤務は務まらないだろうと反対する。しかし蔡武はそれをおしきって家族と共に任地へ出発。
一家の豪勢な姿を見て、船頭にして賊の陳小四一派は瑞虹を残して蔡家の人間を上から下まで殺害、川へ沈める。瑞虹も逆らえず手籠めにされてしまった。その後、陳小四の仲間は彼だけがいい思いをしているのに不満を持ち、蔡家の財産を勝手に山分けして逃げてしまう。陳小四は一人だと船を動かせないので、口封じのため瑞虹の首を絞めて逃げてしまう。幸い、瑞虹は気を失っただけで生きていた。
悲しみにくれながらも仇討を誓う瑞虹。そこへ通りかかった客商の卞福という男、彼女が美人なのに目をつけ、仇討を手伝ってやるからと妾にしてしまう。が、嫉妬深い本妻によって瑞虹は人買いに売られてしまう。妓楼に売られた瑞虹に目をつけたのが遊び好きな胡悦という男。彼は瑞虹を買い取って妾に。瑞虹はこれまでの経歴を話して仇討をお願いする。しかし胡悦も悪人で、適当なことを言っては仇討を先延ばしにする。そしてこの胡悦の本妻も嫉妬深かったので、彼は瑞虹を連れて紹興に。表向きは瑞虹の仇討のためと繕ったが、実際はそこにいる友人と協力して官職を買うつもりだった。紹興に着いたはいいが、頼りの友人は死亡しており、別の友人を頼ったところ騙さされて有り金を失う。すっかり乞食同然の胡悦は瑞虹を使って美人局をすることに。瑞虹は嫌がったが、他にどうしようもなかった。街中で朱源という男と偽の縁談を結ぶ彼女だったが、人を騙すのが忍びなくなってとうとう美人局の件を打ち明ける。朱源は彼女をかくまった。胡悦と美人局に協力していた悪党は瑞虹が見つからないので争いになり自滅。
朱源は立派な人だったので、試験勉強のかたわら彼女のために尽力した。瑞虹は身ごもり、男の子を生む。その後努力が実って知事の地位を手に入れると、今は呉金と名を替えた陳小四と一味を見つけ出し、太守の助けで彼らを死刑に処す。また瑞虹は朱源に、生前蔡武が産んでいた妾腹の子を探してほしいと頼んだ。その子供は男の子で八歳になっていた。
万事が綺麗に片付いた後、家にいる瑞虹から手紙が届く。そこには朱源に対する感謝が述べられており、また自分は汚れた身なので、死を以て一族に詫びると書かれていた。その死を朱源は悼む。その後、瑞虹の産んだ子は若くして試験に合格、彼の話を聞いた天子は瑞虹を烈婦として祀るのだった。

冒頭の詩では酒飲みを戒めるよう述べているが、はっきりいって本筋と全然関係ない(笑) 初読の人はきっと大酒飲みが失敗する話だと誤解するだろう。実際はあらすじでおわかりの通り、全編に渡って鬱展開マックスの陰湿な物語。
いわゆる烈婦もののお話。有名なのは謝小娥でしょうが、今回のお話もそれと同パターン。
ヒロインである瑞虹の不幸ぶりは凄まじく、善人の皮を被ったゴミクズの男どもに三回も騙されて弄ばれてしまう。この時代の女性の無力さが伝わってくる。彼女が途中で死なずに朱源という本当の善人に出会えたのも、結局は運でしかないわけで…。しかも最終的には、自分は貞節を守れなかったからと死んでしまう。う~ん。なんとカタルシスの無い終わり方。一方で、胡悦や卞福の妻は家庭内で絶大な力を誇っており、夫も頭が上がらないほど。このあたり、正妻という立場がいかに女性を強くさせているかがよくわかる。
ちなみに胡悦が上京するくだりでは、当時の官吏がいかに汚い手段で出世していたかが詳しく述べられている。こういう部分は今の中国の汚職にもつながる部分があり、なるほどと思う。
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