2014_08
22
(Fri)23:40

紅楼夢 第十九回

第十九回 花襲人とみっつの約束!


・元春が宮中へ帰り、煕鳳らは片づけで大忙し。

・宝玉は勉強もせず悠々と過ごす。寧国邸へ来るよう誘われたが、芝居や賭博ばかりで面白くない。ブラブラしていたら、下男の茗烟が侍女とお楽しみの真っ最中。

・「どっか遊び行きたい」「外は危険ですよ」「近くならいいんだな。じゃあ襲人の家にいこ~」
 というわけで、ちょうど宿下がりしている襲人の実家へ。

・襲人、宝玉がやってきたと聞いて仰天。貧乏な実家なので何もないが、形ばかりのもてなし。

・宝玉が彼女を見ると、何故か涙のあとが。襲人は「なんでもありません」とごまかす。が、実は両親が彼女をお屋敷から買い戻す話をしていたところだった。絶対に嫌です、と襲人は泣いて反対していたのだ。襲人の母親は、娘と宝玉様の様子を見て「ははん、そういう仲だったの」と買い戻すのを取りやめた。

・宝玉が出かけている間、部屋の侍女達は羽目を外して遊びまくり。そこへやってきた乳母の李ばあや、宝玉が襲人のためにとっておいた高級なお菓子を食ってしまう。
「あたしゃ宝玉様の乳母なんだよ! お菓子くらい食ったって構うもんかい」

・お屋敷へ戻ってきた襲人。例によって宝玉がアホな話を始めるので、ここらで真面目になってもらわなくては、と胸算用。

・襲人「わたくし、来年実家に買い戻されるからもうお世話出来ないんです」
宝玉「君が行っちゃう? ははは、冗談きついなあ。僕が引き留めれば残ってくれるだろ?」
襲人「残らないですよ。わたくしは平凡な人間ですし」
宝玉「ちょ、ま、まさか本当に行っちゃうわけww?」
襲人「そうです。もう決まりましたんですの」
 宝玉発狂。「うわあああん! 君がそんな薄情者だったなんてええ! もういいよ、みんな僕を一人にして去ってしまえェ!」
襲人「(しめしめと思いながら)そんなにわたくしを引き留めたいなら、三つだけ約束を守ってください」
宝玉「三つ? 三つでいいの? オーケーオフコース! 三百の約束だって守るって!」

・こうして両者の間で条約が締結された。
一、馬鹿なことは言わない
二、真面目に勉強しましょう
三、お坊様や道士様の悪口禁止。口紅を食うのも禁止。

・翌日、黛玉のところへ出かけた宝玉。寝床の彼女にふざけかかる。
黛玉「あたし疲れてるから他のところ行ってよ」
宝玉「じゃあ、僕も一緒に休むよ♪ 君の枕で♪」
黛玉「枕ならあっちに他のがあるから、取ってきなさいよ」
宝玉「君の枕じゃなきゃやだよう~」
黛玉「ちっ。しょうがない人なんだから」
 黛玉は宝玉の顎に血痕がついているのを見て、自分のハンカチで拭いてあげる。とうの宝玉は黛玉の袖からにおうほのかな香りをクンクンするのに夢中。
宝玉「いい香りだなあ、なんの香かなあ~。お薬とか香袋かな?」
黛玉「フフン、別にあたしには、そんな珍しいお薬を持ってる身内なんかいませんけどね」←第八回で、宝釵が複雑な調合の薬を飲んでいたことのあてこすり。宝玉はイラッときた。
宝玉「あのさあ、(僕は君一筋なのに)なんでそんな話するの。くすぐっちゃうぞ!」
 宝玉のくすぐりこうげき! こうかはばつぐんだ!
黛玉「お兄さま、許して! お願い!」
宝玉「(ニヤニヤしながら)許してあげるかわりに、お袖の香を存分に嗅がせてもらうよ♪」
 宝玉、黛玉の袖に頭を突っ込んでその香を嗅ぎまくる。うええ。
 その後も宝玉は馬鹿話を連発。
黛玉「でたらめなお話ばっかりね!」
宝玉「そんなことないよ! 全部典故(由来のある話)だよ!」
 それを聞きつけてやってきたのは薛宝釵。
宝釵「ウフフ、宝玉さんの頭は確かに典故でぎっしりね。でも肝心な時になるといつも忘れてしまいますけど」
 ざまみろと言わんばかりの黛玉。
黛玉「あなたも私と同じように痛い目に遭えばいいわ!」

小言
今回のヒロインは宝玉の筆頭侍女である襲人。第六回で宝玉と密通したあの侍女である。貴族の若様である宝玉は日常のあらゆる面で侍女達にお世話をして貰っている(というか彼女達がいないと何も出来ない)。襲人は林黛玉が屋敷へ来た数年前がら宝玉づきの侍女として働いているので、二人の絆もそれだけ深い。今回はそんな彼らの関係を細やかに描いている。
もともとお屋敷の侍女達は、代々賈家に仕えている使用人の生まれであるパターンと、襲人のように外から買われてきたパターンの二通りが存在する。人の家に売った使用人を買い戻すというのはイレギュラーなことだと思うが、襲人の母は賈家が鷹揚だからオッケーしてくれると考えた模様。
後半は宝玉と黛玉のイチャイチャタイム。宝玉の変態ぶりが大爆発な一方、子供らしからぬウィットなやり取りが素敵。
ちなみに、宝玉は黛玉をはじめとするヒロインのもとへ普通に顔を出しているが、これは当時の中国の一般家庭においてまずありえないことである。儒教思想のもとでは男女同席せずが基本なので、よほどのことが無ければ身内以外の異性と接する機会は無かった。そのように抑圧された社会だからこそ、男女が自由に交際する紅楼夢の世界観に、昔の中国人は心揺さぶられたのだろう。

賈宝玉とその仲間たち!
賈宝玉…口紅を食べる趣味や黛玉のお袖クンクンなど、変態ぶりを見せつける。また過去の聖人を批判する、道士やお坊さんを罵るなど、世間の常識に逆らう発言も。こうした一面は封建社会を心密かに憎んでいる読者にとっては痛快だったはず。もちろん、現実でこんなこと口にしたら酷い目に遭う。宝玉はまだ子供だから、かろうじて許されるのだ。作者は宝玉の立場を借りて、社会批判をやってたわけである。遊びほうけている姿を襲人に危惧され、三つの約束を結ばされた。が、その約束はすっかり忘れ去られる。なんだかんだで心は黛玉一筋。
襲人…実家の姓は花。里帰りをしていた。本人はいずれ宝玉様の妾になるという願望があるので、買い戻されるのは嫌だと反対する。勉強に励んで欲しいという素朴な願いが原因とはいえ、宝玉とのやり取りではなかなか計算高い一面を見せる。襲人は男性に従順で侍女の鏡みたいなキャラクターなのだが、こういう打算的な部分は少々反感を買うかもしれない。本人としては悪意はないんだろうけど。
林黛玉…我らがヒロイン。ツン99.9%。香の話だけで宝釵のことを持ち出すなど、相変わらず嫉妬深い。
薛宝釵…出てくるなり宝玉を一発でやりこめる、流石。
李ばあや…第八回にも出てきた宝玉の乳母。相変わらず罪づくりなバーサンである。
茗烟…宝玉づきの若党。彼のお守り役。宝玉が屋敷の外へ出る時には大活躍。世間知らずの若様のために、外の情報を教えてあげたりするのも彼の役目。
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C.O.M.M.E.N.T

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