第二十二回 波乱を呼ぶお誕生日


・薛宝釵の誕生日が近づいた。宝釵を気に入っている史太君が身銭を切ったので、お誕生日の準備に張り切る熙鳳。

・当の宝釵は、誕生日の芝居やお菓子を史太君の好みに合わせて注文し、ちゃっかり得点を稼ぐ。

・そして始まった誕生祝い。部屋に引きこもる黛玉を呼びに、宝玉がやってきた。
「芝居見ようよ。黛ちゃんのために、好きな演目をやらせてあげるから」
「はあ? 他人のお祝いでそんな好意をして貰っても嬉しくありませんし。私のために芝居の一座まるまる呼んでくれるなら行ってもいいけど」←なんつー無茶を…

・そんなこんなで宴席にやってきた黛玉。
 宝玉が宝釵の選んだ演目にケチをつけると、彼女はいかに内容が素晴らしいかを華麗に解説。宝玉が感心する一方、黛玉のイライラポイントが蓄積。
演目が終わったところで、熙鳳が役者の娘を見るなりこんな一言。
「ねえ皆さん、この子誰かに似てません?」
 宝釵はじめ、何人かが気がついた。なるほど、黛玉そっくり。しかし黛玉の神経質な性格を気にして、誰も口には出さない。一人の例外を除いては。
「あははは、林のお姉様そっくりね!」
 笑いながらそう口走ったのは史湘雲。宝玉が慌ててやめろと目配せするが、時既に遅し。
 宝玉の態度に、史湘雲はすねてしまう。実家に帰ると言い始めた。
「ふん、どーせあたしなんか林お姉様のようなお姫様と違いますよーだ。あの人をからかう資格なんかないんですものね!」
 黛玉の方も宝玉に怒り心頭。
「あなたのように、口に出したり笑ったりせず、役者風情と私が似てるってことを心の中で思ってるのが一番サイテーなのよ!」
 宝玉が言い返しもせず去っていくので、さらにトドメをさす。
「もう永久に私のところになんか来ないでよね!」

・部屋に戻った宝玉、目をぎらつかせ、泣き出したかと思うと悟りの境地に入り、曲詞を書き上げる。

・あっさり立ち去ってしまった宝玉が気にかかり、彼の部屋へやってきた黛玉。何やらふざけた曲詞を発見。「あらまあ。あの人が悟りの境地になんて達したのか、見てやろうじゃないの」。宝釵と襲人をひきつれ、宝玉に禅問答を開始する黛玉。宝玉は一言も返せない。さらに宝釵が横から黛玉の話に解説をつけ加えたりする。二人の才女の圧倒的なレベルに愕然とした宝玉は、笑ってごまかすことに。
「アハハ、禅だなんてとんでもないww 冗談だってばwww」

・その後、元春妃から燈謎(燈籠に謎かけが書かれたもの)が届く。皆はめいめい謎宛てに興ずる。
迎春と賈環を除き、全員が正解した。

・この遊びを面白がった史太君は、宴席で兄弟姉妹に燈謎を作らせる。そこへちょうど帰ってきた賈政、宴席に加わる。が、何分厳格親父の前では、宝玉達兄弟姉妹も迂闊に騒げない。見かねた史太君が、宝玉達の作った燈謎を賈政に答えさせる。賈政は燈謎の答えがいちいち不吉なので悲しくなってきた。気分が悪くなり、早々に引き取る賈政。
待ってましたとばかり、宝玉が騒ぎ立てる。やがて賑やかな宴席も終わりを告げるのだった。

次回を待て

小言
お誕生日イベントの回。冒頭では家庭内における史太君の影響力の大きさが伺い知れる。彼女が一声かければ、誕生日といえども家族は気を抜くわけにはいかないのだ。
宝釵誕生祝の宴席では、役者達による舞台が演じられる。当時、役者という職業は身分が低かったため、それに似てるなんて言われたら結構なダメージである。
中盤、黛釵二大ヒロインの禅問答が見物。女性を尊敬してやまない作者が、女性の学識の高さを全面的にアピールした名場面。
最後のシーン、賈宝玉ら兄弟姉妹が作った燈謎の答えはそれぞれ、
元春→爆竹(爆発すれば消えてオシマイ。不吉)
迎春→算盤(弾けば乱れる。不吉)
探春→凧(飛んで行ったら戻らない。不吉)
惜春→燈明(神仏に供える灯火。出家でもすんのか? 不吉)
宝釵→更香(宿直の者が時刻を知るために使う香。つまりその日の終わりを示す。不吉)
賈政は全部解くのが嫌になって、中断してしまう。四姉妹と宝釵が作った燈謎の内容は、彼女達の運命に符合するところがあり、これまた興味深い。

気になる人物達
賈宝玉…黛玉のため良かれと思ってやったことが裏目に出まくり。ドンマイ。
林黛玉…ガラスのハートを持つ我らがヒロイン。いちいち神経質になっていたら人生やっていけないって。でもそこが魅力。
薛宝釵…お誕生日を迎えた。自然体で史太君のご機嫌取りをする出来た娘。悪気は無いんだろうけど、そーいうところが一部の読者の反感を買っちゃうんだよなあ。また要所要所で広範な知識を披露。才女ぶりを見せつけた。
史湘雲…無邪気正直元気な娘。賈宝玉の態度に怒るのもまあ仕方ない。
賈元春…燈謎を姉妹達に贈る。
賈迎春…兄弟姉妹の中で、彼女と賈環だけが元春の燈謎を外す。迎春は温厚な性格なので、あまり気にしなかった。他の姉妹に比べて目立たないけれど、心が広くていい子なのです。
賈探春…ヒロインズの中では黛釵に次ぐ才女。燈謎の凧は、後の回でダイレクトに彼女の運命を暗示する。
賈惜春…四姉妹の末席。燈謎で出家ネタが出たのは…。
賈環…賈宝玉の弟。燈謎が解けなかった。正解した他の兄弟姉妹がご褒美を貰えたことにむしゃくしゃ。自分の答案がみんなの笑いものにされたため、さらにむしゃくしゃ。これで一念発起して頑張るようなら、まだキャラクターとして救いがあるんだけれども。
賈蘭…宝玉の亡き兄、賈珠と李紈の息子。宝玉は叔父にあたる。まだ子供。宴席に呼んで貰えなくてすねていたが、根はいい子。宝玉と違い勉強熱心。燈謎も正解した。
賈政…そこに存在するだけで子供達を威圧するオヤジ。日頃かなり厳しくしてるのだろう。不吉な燈謎を見てげんなり。
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