2014_11
02
(Sun)23:37

紅楼夢 第二十六回

第二十六回 あなたもお悩み? 恋の病!


・宝玉が病気をしている間、林紅玉と賈芸は顔を合わせる機会が増えた。しかし、周囲をはばかって声をかけることが出来ない。その後、宝玉が全快してからは二人とも疎遠になってしまっていた。

・元気が無い紅玉のところへ、同じ見習い侍女の佳蕙が登場。
「聞いて、お姉さん。林お嬢様のところへお使いに行ったら、お小遣いもらっちゃったの! ……まあ、お姉さん、元気が無いのね。お薬でも飲んで休んだらいかが?」
「どこも悪くないのに、薬なんか飲めないわよ」
「あっ、わかりましたわ。きっと晴雯や秋紋の連中が気に入らないんですのね。襲人姉さんのような方と違って、あいつらは家柄がちょっといいだけでエラソーにしてるもの」
「別にあんな人達に腹を立てることなんかないわ。三、四年もしたらみんな落ち着くところに落ち着くんだから」
 冷笑しながらそんなことを言う紅玉。どうやら恋の病で悟りの境地に入ってしまったようだ。

・元気になった宝玉のもとへ賈芸が訪ねてきて世間話。その後、自分を案内してくれた侍女の堕児へ紅玉のことをさりげなく尋ねる。そこで自分が園内で拾ったハンカチが、紅玉のものだと判明。ややうれしや!

・話かわって、散歩に出た宝玉は瀟湘館へ向かう。そこで黛玉が先日のエロ本「西廂記」のワンフレーズを呟いているのを聞いた。にやにやした宝玉がそばにいたことに気がついた黛玉、とっさに部屋へ逃げ出す。
宝玉「ねえ、黛ちゃんw さっき何て言ってたの?」
黛玉「別に何も言ってませんけど?」
宝玉「またまたぁw あ、紫鵑ちゃん。上等のお茶を頼むよ」
紫鵑「上等のお茶ですと、襲人姉さんにでもお頼みしないことには…」
黛玉「こんな人と話すんじゃないわよ! 早くお水を汲んできなさい!」
紫鵑「でも、宝玉様はお客様ですわ。まずお客様にお茶を出して、それから水汲みをいたします」
宝玉「いい子だなあ紫鵑ちゃんは! 「若共你多情小姐同鸳帐,怎舍得叠被铺床(もし君の情熱的な姫様と一緒になれたら、君に寝起きの世話なんかさせないよ)」←これも「西廂記」のワンフレーズ。これは西廂記の主人公、張君瑞がヒロイン崔鶯鶯の侍女、紅娘に言った台詞。宝玉は紅娘を紫鵑に、張君瑞を自分に、鶯鶯を黛玉になぞらえている。ちなみに寝起きの世話云々は、女主人が寝る時、侍女も一緒の寝床で休むのが普通だったから。女主人が男と寝るようになれば、当然侍女が寝床の世話をしなくても済む。つまり宝玉は間接的に「黛ちゃんと寝たい」みたいな意味合いの台詞を言っちゃったわけ。
黛玉「(表情をこわばらせながら)お兄さま、今なんとおっしゃって?」
宝玉「別に何もォw」
黛玉発狂。「酷いわ! エロ本を読ませて、本の中のいやらしい台詞で私をからかうなんて! 私はこれからずっと、殿方のいい慰み者にされてしまうんだわ!」
 必死になだめかかる宝玉のもとへ、襲人がやってくる。
「殿様がお呼びですわ」
 怖いオヤジの呼び出しと聞いて、あたふた飛び出す宝玉。が、駆けつけてみれば待っていたのは薛蟠。初物の野菜が届いたので、一緒に食べようとのこと。わいわい騒いで何事も無く終わるのだった。怡紅院へ帰ってくると宝釵もやってきてにこやかに言う。
「うちの初物を召し上がったのですね」
「うん。君はおうちの人だから、僕より先にいただいたでしょ?」
「わたくしにはそんな資格ありませんわ」

・一方の黛玉、宝玉が父親に呼ばれたのが心配になって、怡紅院へやってくる。ところが、喧嘩をしていた晴雯が癇癪を起こし、扉を開けようとしない。
晴雯「(戸をたたく音を聞いて)チッ、またお客様ァ? 次から次にやってきておしゃべりして、私達を眠らせないつもり?」
黛玉「ねえ、私よ。扉を開けてよ」
晴雯「誰だか知らないけど、若様の言いつけで開けられないのっ!」
 しゅんと落ち込む黛玉。
「いくらここがお母様の実家でも、私なんか寄る辺のない人間だわ。両親も亡くなったし。むきになって騒ぎ立てても、嫌な思いをするのは自分だし…」
 ブルーになっていた彼女へ追い打ちをかけるかのように、扉越しで聞こえてくる宝釵と宝玉の笑い声。
「今朝のエロ本のことだって、殿様へ言いつけに行ったわけでもないのに、私を部屋に入れてくれないなんて。そんなにあなたを怒らせたかしら。もしかしたら、明日からは私と会ってくれないかも…」
 思い詰め、一人で泣き崩れる黛玉だった。

次回を待て

小言
前半の主人公は小紅こと林紅玉。賈芸君への想いに悩んだり、お仕事のことで苦労したり、彼女の細やかな日常が描かれる。
紅楼夢が中国古典でも特異なのは、紅玉のような身分の低い者達にきちんとしたストーリー・役割を与えてしかも繊細に描いていること。三国志や水滸伝なんてそもそも女や平民の出番が殆ど無いし、民間の説話である三言二拍すら侍女などの奴隷身分を主役に据えた作品は殆ど存在しない。紅楼夢を除くと、あらゆる階層の人々で物語が構成されているのは金瓶梅くらいだろう。
後半は宝玉と黛玉、いつもの喧嘩シーン。子供らしからぬ知的なやり取りが素敵だ。西廂記の引用場面は、まだ子供な二人のことだし、本当に意味を知って言っているのかは意見が分かれるところ。

恋の病にお悩みの人達
林紅玉(小紅)…純情だなあ。恋のせいで仕事も手につかぬ模様。
佳蕙…見習い侍女。まともな出番は今回きりだが、幼げな言動が愛らしくて印象に残る。
賈芸…拾ったハンカチが紅玉のものだと知ってハッピー。中国古典だと、ハンカチは恋のキーアイテムである。
賈宝玉…病気が治っていつも通りに。
林黛玉…相変わらずヒステリックなお嬢様だ。でも、孤独な身の上を吐露するシーンは泣ける。
晴雯…宝玉の侍女。キツイ性格は黛玉と似ている。
薛宝釵…あなた、いつも出番のタイミング悪いですね。家の初物を食べなかったのは、女子としての身分をわきまえた思慮深さゆ
えの行動だろうか。
薛噃…宝釵の兄にしてバカ殿。宝玉との会話にて、字もろくに読めないことが判明した。気前の良さはいーとこの坊ちゃんらしい。
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